はじめに
3つのI(日本経済新聞)
いっぽう日本経済新聞は、自社独自の視点に基づく造語「3つのI(アイ)」も発信していました(2017年12月29日)。記事の題名は「18年株高へ3つの『I』 投資・収入・インフレ」。つまり、今年の株高上昇を牽引する可能性がある要素として「投資」(investment)、「収入」(income)、「インフレーション」(inflation)の3項目を挙げているのです。
このうち投資とは「設備投資」のこと。今年、企業による設備投資に大きな伸びが期待できること、また政府が設備投資を行う企業に対して税制を優遇する意向であることを挙げ、設備投資が株高の要因になると予想しています。
また収入は、言い換えると「個人消費」への期待を示しています。人手不足の問題が拡大していることを背景に、賃上げの動きが広がり、それが個人消費の拡大にも寄与するとの予想です。
さらにインフレ(物価上昇)が高水準を維持すれば、経済の好循環が機能しはじめると、記事では見立てていました。
トリプルバブル(森永卓郎氏)
ここまでは比較的ポジティブな印象を与える予測ワードが続きましたが、いっぽうでネガティブな予測もありました。
例えば経済アナリストの森永卓郎氏は、出演したラジオ番組「あなたとハッピー」(ニッポン放送/2018年1月10日)で「今年崩壊するかもしれない3つのバブル」というテーマの予測を行っていました。森永氏いわく、今年は「トリプルバブル」の崩壊可能性があるというのです。
一つめのバブルは「都心不動産のバブル」。東京五輪の開催を背景に現在、東京の都心では高級マンションの建築・販売が好調です。しかし早ければ今年、おそくとも来年の前半にはそのバブルが崩壊するのではないか……というのが森永氏の見立てでした。
二つめのバブルは「ビットコインのバブル」。ビットコインといえば、昨年はその相場の急騰ぶりが話題になりました。昨年始めに1ビットコイン=約10万円だった相場が、同年12月中旬には約220万円にまで高騰したのです(その後、原稿執筆時点では150~160万円付近の相場で推移)。このビットコインについて森永氏は「日銀が対抗的な仮想通貨を出す可能性」などを論拠に、ビットコインバブルの崩壊を予測していました。
そして最後のバブルは、シンプルに「株価のバブル」としていました。これについて森永氏は詳しい分析を紹介していませんが、株価バブル「崩壊」の結果として「安倍政権が消費増税の凍結もしくは引き下げに踏み切るのではないか」「さらにその結果として2019年は景気が好転するのではないか」とも予測していました。
まとめ〜共通の温度感覚とは?〜
この他にも、米国のリスク専門コンサルティング会社のユーラシア・グループ(Eurasia Group)が2018年の10大リスクの一つとして紹介した「保護主義2.0(Protectionism 2.0)」など、面白そうな表現がいくつかあったのですが、今回はここまでとしましょう。
今回紹介した経済予測ワードの中で、個人的に興味を惹かれたのは「トリプル3万」(みずほ総研+日経)と「トリプルバブル」(森永卓郎氏)がほぼ裏返しの関係に位置している、という構造でした。例えば森永氏の「株価バブルの崩壊」は、みずほ総研の「日経平均3万」の裏返し。また森永氏の「ビットコインバブルの崩壊」は、みずほ総研の「ビットコインの3万ドル突破」の裏返しなのです。
加熱する相場をバブル(適正価格からの乖離)とみなすかどうか、またそれがバブルであるとして、崩壊タイミングがいつになるのかについて、両者に見解の相違はあります。しかしながら、少なくとも現状の相場の好調ぶりについては、見解が一致しているともいえます。この温度感覚は、今年の経済予測ワードに共通する温度感覚であったように思います。