はじめに

学童保育付き分譲マンションも誕生

子供が保育園から小学校に上がると、親は子供が放課後に過ごす場所や過ごし方について頭を悩ませるようになります。いわゆる「小1の壁」です。

保育園付きのマンションが増える中、そんな事態を見越して、小学生を対象にした民間学童保育を設置する分譲マンションが登場しました。JR中央線の西国分寺駅から徒歩10分の場所にある、「ザ・パークハウス 国分寺四季の森」です。

三菱地所レジデンスなどが開発を手掛ける約500戸の大規模分譲マンションで、すべての街区で入居が始まるのは今年10月の予定です。

国分寺市には、一定規模以上のマンションを建設する際、敷地内に保育園や学童保育といった「地域貢献スペース」を設置しなければならない「まちづくり条例」があります。当初はマンション内に保育園の設置を考えていましたが、自治体からの強い要請で民間学童を選択しました。

民間学童を設置した理由

なぜかといえば、同市ではこの10年間で認可保育園が18も開設され、待機児童問題がそれほど深刻ではなかったからです。それよりも、全入制度を採用している公設学童が抱える問題のほうが深刻でした。

まず、学童に通う子供の数が増え、敷地が手狭になっていました。また、給食や保育時間の延長など、より充実したサービスを求める声も自治体に届き、公設学童の限界を感じていたといいます。

民間学童の設置は「購入を検討されているお客様の背中を強く押してくれ、物件の評価につながっていると感じます」と、同物件の販売を担当する三菱地所レジデンスの小倉英二さんは話します。現在、購入契約者の60%以上が子育て世帯。残りの3割強も、これから子づくりを考えている世帯だといいます。

マンションの1階に設置される学童の前には、市が管理する公園が広がります

このマンション内で学童を運営するのは、都内を中心に教室を展開するウィズダムアカデミーです。ここでは公設学童と同額の料金で預かってくれ、オプション料金を支払うと施設内でリトミックや英語教室などの習い事をすることもできます。

実績のある民間学童が入ることで周辺地域における優位性が出るとして、「マンションの資産価値の維持と本人の利便性という観点で、学童付きの分譲マンションは今後普及が進んでいく」と、SUUMOの池本洋一編集長は話します。

住まい探しは育住近接を視野に入れて

保育園や学童保育といった付加価値のついたマンションが増えている背景には、駅近物件の人気が高まっているため、駅から徒歩10分以上のマンションは何らかの付加価値をつけないと売れにくい、という売り手側の事情もあります。

その点でも、保育や教育に関連した付帯施設には安定したニーズがあり、入居者の子供が成長した後も周辺住民の利用が見込めるため、資産価値が毀損されにくいといった利点が考えられます。

共働き世帯が家探しをする際には「職住近接という考え方をベースに、育住近接を視野に入れて住まいを探したほうがいい」と、池本編集長はアドバイスします。

保育園に入園しやすいエリアかどうかは、住んでから気づくことが多いそうです。住宅を選ぶときに大切なのは、通勤の利便性を考慮しつつも、比較的保育園に入りやすい行政区はどこなのか、リサーチすることだといいます。

一昔前は、都心から離れた郊外の自然豊かなエリアが「子育て環境が良い」として選ばれてきました。しかし現在では、保育園や学童に通いやすく、身近に同じような子育て世帯がいる環境が選ばれるようになりました。時代の変化とともに、良いとされる「子育て環境」の定義が変わってきているようです。

(文:編集部 土屋舞)

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