はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

2011年からインデックスの投資信託で老後資金のために分散投資をしています。一昨年からは夫婦でNISA口座を開設し、バランス型投信で子供2人分の教育資金を積立てています。現在、投信で積み立てた老後資金は850万円、教育資金は2人分で180万円程度です。今後も老後資金を36万円、教育資金を24万円を年間で積み立てる予定です。会社には企業型確定拠出年金がありますが、現在マッチング制度は導入されていません。


2017年からは企業型確定拠出年金に加入していても、個人型確定拠出年金に加入できるようになったと聞きます。この場合、老後資金用として証券口座で分散投資している積立額を減らし、上限枠一杯まで個人用確定拠出年金で積立を行ったほうがよいのでしょうか? 個人用確定拠出年金の適用枠を拡大する際に注意すべき点を含め、アドバイスいただければと思います。


【現在の状況】
現在の収入:680万円(共働き)
今後の収入と支出:今後も大きな収入変動はなし
金融資産:投資信託1,030万円、その他預貯金等100万円
負債:なし(転勤も多く賃貸派です)
保険:収入保障保険が月間1万円、医療保険が夫婦で9,000円(65歳まで)
(40代後半 既婚・子供2人 男性)


内藤: ご質問ありがとうございます。

NISAと確定拠出型年金を利用して資産形成をされているということで、堅実なスタンスがわかります。

問題は2つの仕組みをどのように使い分けるかですが、ポイントは税金と投資対象の品揃えになると思います。

NISAか確定拠出年金か?

税制上はNISAも確定拠出年金もメリットがあります。

NISAの場合は年間120万円という上限がありますが、その範囲であれば非課税のメリットが享受できます。確定拠出年金も控除限度の範囲であれば、同様に税制上のメリットがあります。

税金の次に考えなければいけないのが、どのような投資商品を組み入れるかです。

NISAの場合、大手ネット証券に口座開設すれば、低コストのインデックスファンドを積み立てることができ、効率的なグローバル分散投資が実践できます。

しかし、確定拠出年金の場合は、商品ラインアップが導入されているプログラムによって異なり、場合によっては投資したいアセットクラスのインデックスファンドが用意されていないケースもあります。

そのような場合、NISAと確定拠出年金の2つを合算して資産配分を計算し、全体でバランスがとれるように配分を考えることが大切です。

資産は全体でバランスを考える

例えば、確定拠出年金に新興国株式のインデックスファンドがなければ、NISAで足りない分を新興国株式ファンドに多めに配分し、バランスさせるといった方法です。

ご質問者の場合、ご夫婦がNISAと確定拠出年金にそれぞれ2つの口座を保有しているので、全部で4つの口座に資産が分かれていることになります。

それぞれをバラバラに管理するのではなく、4つの口座の投資対象を合算し、資産の種類ごとに分類してアセットアロケーションをチェックするようにしましょう。

一つひとつの口座の資産が特定のものに偏っていても、全体でバランスしていれば問題ありません。

「借金=悪」ではない

また、ご質問とは直接関係ありませんが、金融資産の運用だけではなく不動産投資も検討してみる価値があると思います。

共働きで収入があり、賃貸派で住宅ローンもないということですから、「お金を借りる力」をまったく使っていない状態だからです。

「借金=悪」と思いこんでいる方もいますが、消費のためではなく投資のための借入は必ずしも悪いことではありません。身の丈にあった借入によって、資産運用にレバレッジをかけることができるのです。

金融資産と不動産のような実物資産の組み合わせを資産運用に導入することで、投資のバリエーションをさらに広げ、失敗しにくい投資が実現できると思います。

できるだけ広い視点から、自分たちにとってベストな資産運用の方法を模索してみてください。

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