はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は伊藤英佑氏がお答えします。

主人の両親と同居しています。自宅は持ち家ですが、建物登記をまだしていません。義理両親は「自分達が死んだ後に孫に名義を移す。そうすると相続税がかからない」と言います。本当でしょうか?

<相談者プロフィール>
・女性、43歳、既婚・子供3人
・職業:パート・アルバイト
・居住形態:主人の両親と二世帯同居、持ち家(戸建て)
・住んでいる地域:大阪府
・手取り月収:36万円
・毎月の支出目安:20万円


伊藤 :ご質問ありがとうございます。

両親、子(ご相談者)、孫として関係性を表記をさせていただきます。二世帯住宅で両親、子(ご相談者)、孫が同居し、建物未登記の状態で、両親が亡くなった後に孫に相続させると相続税はかからないのか、というご質問に回答いたします。

ご質問内容にはいくつかのポイントがありますが、結論としては、以下でご説明するいくつかの条件を満たし、所定の手続きをすれば、ご両親が言う通り相続税はかからないと考えられます。

なお、ご相談内容は単純ではない事項もありますので、ポイントを絞って回答しております。全体像や個別の事情等も踏まえ、専門家等にご相談いただき、実際の行動に移されることをおすすめいたします。

不動産の価値が基礎控除額の範囲なら相続税はかからない

相続税がかかるかどうかという観点で最も重要なポイントは、父母ともに両親が亡くなって財産を相続する際に、両親の課税遺産総額が以下で計算される基礎控除の金額の範囲内であれば相続税はかかりません。

相続税の基礎控除額:3,000万円+法定相続人の人数×600万

義理両親の子が、ご相談者の配偶者1人であれば3,600万円が基礎控除になります。

両親の相続財産のうち不動産の評価がどうなるかが大きなポイントになりますが、ご自宅の土地面積が330㎡(100坪)までであれば、同居親族が相続する場合には居住用小規模宅地等の特例が適用できますで、土地の評価額が80%減で計算することができます。

相続税の計算をする上で正確な説明ではないところもありますが、両親の相続時の財産として以下の合計金額を見積もって、基礎控除の金額以内になるかどうか、概算試算をシミュレーションされると良いでしょう。

・預貯金や株式等の有価証券(相続時の想定残高・時価)
・建物家屋(固定資産税評価額→毎年固定資産税を支払うときの通知書の評価額を見ればわかります)
・土地(宅地)(固定資産税評価額×1.14×20%)

もちろん、ほかにも財産的価値がある資産をお持ちであれば、計算に加える必要があります。

土地は路線価で相続財産の評価額を計算します。一般的に公示価格を100として、概ね相続税路線価は80、固定資産税評価額は70というのが標準的ですので、ざっくりの以下の試算で目安がわかります。

固定資産税評価額×1.14(=80/70)

土地面積330㎡までが、小規模宅地等の特例の適用範囲です。一般家庭では概ね十分な自宅面積になりますので、ここでは適用範囲内の土地を前提として話を進めます。

被相続人数の数に対して相続税の課税対象者は、平成28年度の大阪国税局管内で8.4%です。ご相談のケースでは相続税がかからない範囲内である可能性は高いものと思われますが、まず基礎控除の範囲内かどうかをご確認されてください。

なお、特例適用後の財産額が基礎控除を超えていなくて相続税の支払はなくても、適用前の財産額が基礎控除を超えていれば、相続税の申告手続きは必要になります。

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