はじめに

国が分かれ、通貨コードも分かれる

エキュやユーロの例でも分かる通り、通貨には廃止や新設が付き物です。その種の出来事には、国家の分裂・統合も連動しがちなもの。通貨コードの変遷にも、そんな分裂・統合の歴史が刻まれていました。

分裂の典型例はチェコスロバキアでしょう。1918年にオーストリアハンガリー帝国からの独立により成立した同国は、1993年にチェコとスロバキアに分裂することになりました。

このチェコスロバキアに絡む通貨コードの変遷を辿ると、元々存在したCSK(チェコスロバキア・コルナ)というコードが廃止され、新たにCZK(チェコ・コルナ)とSKK(スロバキア・コルナ)が誕生しています。つまりCSという国がCZとSKに分かれたわけです。同様の分裂劇は旧ソビエト連邦や旧ユーゴスラビアでも起こりました。

統合の典型例は、かつて存在した東西ドイツでしょう。第二次世界大戦後に成立した西ドイツ(ドイツ連邦共和国)と東ドイツ(ドイツ民主共和国)のことです。ベルリンの壁の崩壊を経て、1990年に統一国家(ドイツ連邦共和国)となったことは皆さんもよくご存知のことと思います。

この統合劇は通貨コードでも確認できます。具体的にはDDM(東ドイツ・マルク)が廃止され、西ドイツの通貨DEM(ドイツ・マルク)が存続したという形です。言い換えると、DDとDEが合併してDEが存続したわけです。もっともそのようにして生き延びたDEM(ドイツ・マルク)も、EUR(ユーロ)の誕生によりヒストリカルコードになる運命を辿ります。

国が分かれずとも、通貨コードは生まれる

国家の統合・分裂がないまま、通貨の廃止・新設が進む場合もあります。

廃止の典型例は、ユーロ導入によって廃止されたヨーロッパ諸国の通貨ではないでしょうか。例えばDEM(ドイツ・マルク)、FRF(フランス・フラン)、ITL(イタリア・リラ)などの通貨コードが、ユーロ導入とともにヒストリカルコードになりました。このほか米ドルへの置き換えでヒストリカルコードになったECS(エクアドル・スクレ)、CFA(セイファー)、フランへの置き換えでヒストリカルコードになったGWP(ギニアビサウ・ペソ)などの事例もあります。

新設の典型例はユーロですが、それ以外にも事例が存在します。例えば、SRG(スリナム・ギルダー)に代えて新設されたSRD(スリナム・ドル)や、SDD(スーダン・ディナール)に代えて新設されたSDG(スーダン・ポンド)などの事例がありました。

実はこのスリナム・ドルとスーダン・ポンドの導入には、ある共通点が存在します。それは実質的なデノミ(※)を目的とした通貨変更という共通点です。通貨コードの変遷には、デノミの歴史も数多く刻まれていました。

※インフレで巨大化した金額表示を抑制するため、通貨の呼称単位を小さな新単位に切り替えること

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