はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する花輪陽子氏がお答えします。
自営業のため年収がなかなか安定しないので、現預金のみの今の状況から少しずつ投資信託などの資産運用をしたいと考えています。現在は毎月の支出のほかに、銀行の積立貯金を月10万円、小規模企業共済に月7万円、年額12万円の個人年金、年額1万円の掛け捨て保険に加入しています。 総資産は1,000万円程度です。
近い将来に子供や住宅購入も考えているので、すぐに引き出せないiDeCoや倒産防止共済などにはなかなか積極的になれません。今年からつみたてNISAを始めようと口座開設しましたが、そのほかにもおすすめの運用方法や、節税対策などがあれば教えていただきたいです
〈相談者プロフィール〉
・男性、23歳、既婚、子供なし
・職業:自営業
・居住形態:賃貸
・同居家族:妻(専業主婦)
・住んでいる地域:埼玉県
・手取りの世帯月収:90万円強
・毎月の支出目安:45万円程度
花輪: 自営業の場合、事業そのものにリスクがあるため収入が上下して安定していません。そのため会社員と比べてリスクを限定した運用を心がけましょう。また換金性を考えるのも大切です。いざとなったら引き出せる形にしておくと良いでしょう。
確かに、iDeCoは節税効果が高いですが、原則60歳まで引き出しができません。国民年金基金も同様に、支給開始年齢に達するまで原則として引き出すことができません。
そのため、小規模企業共済を満額かけているのは良いことでしょう。小規模企業共済の場合、賭け金の納付期間に応じた貸付限度額の範囲内で事業資金等を借り入れることもできます。いざという時に安心ですね。
生命保険料控除を活用して節税対策
そのほかに考えられる節税は生命保険料控除などです。生命保険料控除とは、払い込んだ生命保険料に応じて、保険料負担者のその年の所得から差し引かれる制度です。
控除の限度額は平成24年1月1日以降に契約した生命保険の場合、「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」「介護医療保険料控除」各4万円です。年間の支払保険料が8万円超だと控除額は一律4万円になります。
現在、年額12万円の個人年金保険に加入しているということですが、条件を満たせば最大で4万円の控除を受けることができます。
同じように「一般の生命保険料控除」の枠があるので、終身保険や変額個人年金保険などを検討するのも1つかもしれません。ただし、保険契約によって異なりますが、加入後すぐに解約をすると元本が割れることがあるのでよく確認をしましょう。
つみたてNISAはいつでも売却をすることができるので節税効果も高く換金性が良いです。ネット証券では債券も組み入れたバランスファンドなどのラインナップも豊富です。リスクを限定したい場合は、債券を組み入れたファンドを選ぶのも1つの手です。ただし、手数料が高くなることもあるので、それも含めてよく確認をしましょう。
住宅ローンを組むなら頭金として3割は用意を
近い将来、子供や住宅購入も考えているということですが、自営業の場合、会社員と比べると住宅ローンを借りるハードルが高くなります。
ローンを組むには安定した所得を継続して確保する必要があります。また、自己資金を多めに準備する方が金利の条件が良くなる場合が多いです。自営業の場合は、銀行ローンよりもフラット35の方が一般にハードルが低くなりますので、両方見積もると良いかもしれません。
住宅ローンの年間支払い額(返済)が自分の年収の何割を占めるかを、パーセンテージで表した数値を返済負担率といいます。金融機関や住宅ローンの種類によって異なりますが、概ね30〜35%程度となっており、それを超えると要注意です。
たとえば年収400万円の場合、返済負担率の基準を35%以下とすると、400万円×35%=140万円が年間返済額の上限になります。
実際には子供の教育費(手取りの15%程度まで)などもありますので、安全に家計を回すことを考えると住居費は手取り月収の35%以内に留めたいところです。
住宅ローンの審査を有利に進めるうえでも、健全に家計を回すうえでも、住宅を取得するなら自己資金を3割程度など多めに準備をしたいですね。