はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する花輪陽子氏がお答えします。
親からの贈与などが毎年あり、以下の通り、金融資産がだいぶ貯まってきました。どのような割合で投資にまわそうか悩んでいます。
・貯金:450万円
・全期前納型の日本の介護保険:400万円(5年払込の3年目)
・米ドルの一時払いの生命保険:500万円(1年目)
・アメリカ株(one tap buy):30万円
・投資信託(ロボ系):90万円
・クラウドファンディング(不動産系):60万円
保険は子供が生まれるので貯蓄目的にはじめました。日本の介護保険は利率が低いので、解約金が上回ったら売って、ほかの投資にまわそうか悩んでいます。また保険や貯金などが一定額貯まったので、今後は支出を除いた20万円を、NISA、iDeCoに月5万円、投資に15万円ほどまわして運用しようかなと思っていますが、それだと投資の割合が高すぎるか悩んでいます。
家は親が所有しているため住宅ローンや家賃はなく、旦那と私の財布は別にしています。旦那も米ドルの生命保険とつみたてNISA、iDeCoなどに入っており、毎月15万円ほど貯金をしていて、それ以外はお互い自由に使っている状況です。
自分が会社経営をしていることや親の資産・不動産を今後引き継ぐ可能性からも、投資については実践しながら学びたいということもあり、ある程度積極的にやりたい気持ちがあります。もちろん損はしたくないですが……。そんな中、どのような投資を選び、どの程度の割合で始めたら良いかアドバイスいただけたら嬉しいです。
〈相談者プロフィール〉
・女性、30歳、既婚、夫(31歳・会社員)、妊娠中
・職業:その他
・居住形態:持ち家(マンション)
・住んでいる地域:東京都
・手取りの世帯年収:1,000万円(夫500万円、妻500万円)
・毎月の支出目安:推定40万円(夫20万円/正確にはわかりません、妻20万円)
花輪: 日本人の多くの方は、資産運用のゴールやライフプランを設定せずに、やみくもに運用をしなければと思っています。それでは「これで良いのかしら?」と、永遠に迷い続け、不安も消えることがありません。
人生100年時代になると、どう変わる?
「人生100年時代」という言葉がしきりにメディアで飛び交っていますが、元々は英国ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏が長寿時代の生き方を説いた著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で提言した言葉です。
これまで多くのFPは90歳まででライフプランのシミュレーションを出してきましたが、100歳まで生きるとなるとプランが変わってきます。
健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されているため、平均寿命と健康寿命との差は、日常生活に制限のある「健康ではない期間」を意味します。
2013年において、この差は男性9.02年、女性12.40年でした。今後、人生100年時代で平均寿命が延びるにつれて、この差が拡大すれば、医療費や介護費の増加に備えた貯蓄はさらに必要になります。
現在、30歳ということなので、2088年に100歳になる計算です。その時はどのような時代が待ち受けているのか分かりません。
2060年には日本の人口は25%減少し、8,674万人になることが予測されています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口 平成24年1月推計」の出生中位・死亡中位仮説による推計結果)。また、2060年には国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されています。
日本の社会保障の仕組みは自分で積み立てる仕組みではなく、その時の高齢者の給付を、その時の現役世代が支払う仕組みになっているために、人口構成の影響をまともに受けてしまいます。人口構成がまったく違う頃に作った制度のため、何度も微調整が必要になり、給付のカットや保険料の引き上げが度々行われています。
老後まで逆算してライフプランを考える
そのため、自助努力によって、個人で年金などのインカムを作ることが必須になります。有効な制度として、iDeCoなどが挙げることができます。
原則として60歳まで引き出すことができないので老後保障になりますが、そのデメリットさえ抑えれば、税の優遇を受けることができます。相談者の場合は毎月の収支にかなりの余裕があるため、iDeCoの割合を高めても良いでしょう。
投資の割合に関しては、老後までのキャッシュフローを見通して、いくら必要になるのかを測定する必要があります。場合によっては、それほどリスクを取らなくても目標額を達成することができる場合もあります。
日本FP協会のホームページでも、未来家計簿の役割を果たすキャッシュフロー表をダウンロードすることができます。また、詳細のキャッシュフローをプロに見積もってもらいたい場合は、有料でFPに相談をするという方法もあります。
保険の解約金の運用先としては、損はしたくないということなので、債券などを検討しても良いかもしれません。
個人向け国債や米国債などは日本の証券会社から購入することが可能です。通常の債券は半年に一度クーポンを受けることができ、満期時には額面で戻ってくるので、安定してインカムを確保することができるからです。