はじめに
なぜ買収額は36億円だったのか
――経営統合に関して、シナジー効果はどう働くのか。両社で顧客特性をどう考えているのか。また、買収金額が36億円。CCの収益力や資産からすると低い印象。予期せざるリスクによって相対的に低い価格になったのか。
松本: シナジー効果については、証券会社と仮想通貨交換業の顧客の中にはオーバーラップもある。ただ別会社なので、顧客情報の照合ができない。別の顧客基盤になる。FXの顧客を中心にオーバーラップがあると思う。
ただし、マネックスとCCはどちらも口座数がざっくり170万程度。稼働口座でも70万くらい。かなりの規模であり、まったく違う客層もいる。特に若年層には、仮想通貨の客のほうが多い。
マネックスの新卒採用のプロセスでも、マネックスを志望しているのに、株式や投信は触ったことがない、ビットコインは持っていますという学生のほうが多い。年齢層で顧客層はかなり違うのではないか。
また、マーケットとして、仮想通貨は世界のゴールドの5%を超える時価総額を持っている。かなりの存在感のある資産クラス。昨年、仮想通貨の時価総額は2兆円から一気に50兆円まで上がったが、投機的なお金が流れたことで株式などの伝統的な資本市場が過熱しないで済んだかもしれない。
マーケットは常に1つなので、仮想通貨は重要な資産クラスになってくる。CCの顧客、マネックスの顧客の双方に新しいトレーディングの機会を提供することが可能。そういう点でのシナジーは大変大きい。
また、新しい技術を持っているCCと、古いけれども伝統的な証券会社のセキュリティの経験は補完関係にある。そこでも大きなシナジー効果がある。
買収金額は、大きなリスクが潜んでいるとは思っていない。デューデリジェンスの中で限定的であることを確認している。ただし、今後のCCを考えると、業登録できて事業を続けていけるのか。いけない場合は利益が出なくなる。続けていける場合は利益が大きく出る。株式の買い手と売り手の間に大きな見方の差が生まれる。
その中で、欧米でよく使われる「アーンアウト」と呼ばれる、将来の利益をもともとの株主に後でお支払いする形で、認識にギャップがある状況を解決して、先に進む形。その結果、見た目の数字は小さめに見える。リスクが大きいとか、収益力が小さいわけでは決してない。
CCのブランドは継続
――和田社長の今の気持ちは?成長市場・成長企業の株を手放すのに躊躇はなかった?
和田: なかった。目的は当初から変わらず、これだけの事件を起こしてしまったので、顧客の資産を保護するのが第一。ならびに業務を継続するのが第一と考えていました。そのために代表取締役を降り、より強固な経営陣が確立できるのであれば不満はまったくない。
――今回の買収はいい買い物をした?CCの名前は残る?
松本: 名前、サービスブランドは残る。CCは大変大きなビジネスであり、ブランド価値を持っている。当然、そのまま残っていきます。
M&Aはある意味、結婚であって、どちらがどっちでなく、100%の関係は1つの会社。買い物とかではなく、CCと一緒になって、新しい金融機関、新しいサービスを作っていくことにエキサイトしている。本当に素晴らしい出会いであり、素晴らしいことができた。
――マネックスが現在の仮想通貨市場をどう見ており、どう変えようとしているのか。
松本: 仮想通貨については、大変重要な資産クラスになっている。3年前からCCを利用している。去年から勉強しようと秋葉原に行って、自作PCを作り、マイニングを始めてみた。
時価総額が50兆円まで行ったが、これは無視できないもの。1兆円に満たないとそのまま消えていくが、いったん50兆円まで伸びた資産はこれからも大きくなっていく。すべての金が800兆円。金でも刻印があっても偽物かもしれない。盗まれるかもしれない。仮想通貨も同じ。一方で、金よりも軽いし、持ち運び自由。支払い手段としても、資産をキープする手段としても、メジャーになることは間違いないと考えている。
仮想通貨の未来は大変大きい。そういう中でも、コンプライアンスや既存の金融の枠組みがある中で、今までの枠組みを理解しながら、その枠組みを超えるような新しい市場を強く大きくしていくことに対して、CCが主役だが、CCや業界が社会的に認識されて、安全なものになっていくためには、われわれがお手伝いすることがたくさんある。
和田:秘匿性の高い通貨について、まだ特に決定した事実はない。完全子会社化が直接関係してくることでもない。当社としては秘匿性の高いオーガーなどの仮想通貨には、金融庁からの命令も出ているが、マネーロンダリングなどのリスクを適切に検討し、しっかり決断することになっている。
今回、経営体制が抜本的に変わったことで、委員会や取締役会における意思決定のプロセスは変わった。その中で適切に判断していく。NEMについては、今後も継続して取り扱う所存です。