はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

今後の資産運用と娘の学資保険についてお聞きしたいです。今年の5月に娘が生まれました。0歳から学資保険に入ったほうが掛け金も安くおすすめと聞いているのですが、今から加入したほうがいいでしょうか。


また、貯蓄だけではもったいないと思っており、現在200万円ほどの資金で株式投資を試みています。あまりアクティブに運用を行わずに、IPOに申し込む、たまに株価が大きく下がったときに大型株の売買を試すくらいで、株の利益はほとんどない状態です。しかし、今後のことも考え、資産運用の知識や株式投資の知識をつけていきたいと思っています。また、両親が不動産投資をしているため、そちらにも興味があります。ただ、金額が大きくなってしまうため、躊躇しているところです。


フリーランスで仕事をしているため、将来の不安などはありますが、今の仕事は好きですし、続けていけるならずっと続けていきたいです。そのためにも資産運用で少しずつ資金を増やせたらいいなと思っています。今から、どのように動いていったらよいでしょうか。


〈相談者プロフィール〉
・男性、30代後半、既婚、子ども1人
・職業:フリーランス
・居住形態:賃貸
・世帯月収:平均60万円(提携先があるので安定して50万円は確保できています)
・毎月の支出目安:平均40万円
・月額保険料:夫1万(低解約返戻金型定期保険・ガン保険)、妻2万(掛け捨て)
・資産:現預金1,000万円、株式200万円


野瀬: ちょっと現状について、つかみにくい箇所があるので、いただいた情報から推測し現状分析を行います。

まず収入・支出面ですが、収入は月50万円+アルファで、支出は月40万円ぐらいでしょうか(「収入」を自営業の売上ではなく、経費なども引いたあとの儲けと解釈しています)。そのため、月々の余剰資金は10万円+アルファになると思います。ただ、フリーランスということもあり、この「アルファ」の部分は考えないようにしましょう。

毎月10万円の余剰資金は多いようにも思いますが、質問者のご年齢からお子さんの年齢も推測すると、これからお子さんの養育にかかる費用はますます増えるタイミングだと思います。そうであるなら、それほど余裕がある金額とはいえません。

一方、財産面は比較的優秀かなと思います。持家でないので、ある程度預金があるのはあたり前なのですが、30代で現預金1,000万円、株式投資で200万円というのは、まずまずだと思います。このあたりのアドバンテージを活かして、今後の対策を立てられればと思います。

学資保険は負担にならない額からスタートを

学資保険の一番のメリットは「強制的にお子さんの学費が貯められる」ことではないでしょうか。もちろん、質問者に万が一のことがあった場合にお子さんの学費を保障する機能もあります。しかし、一般的には貯蓄性の高さに比重を置いた商品が多いのが現実です。

質問者の場合、現在も一定額の金融資産をお持ちなので、もともと貯蓄する習慣があるのだと思います。ですから、原則、学資保険は不要であるともいえます。あえて学資保険に入らなくても、質問者であれば、しっかり将来に備えた貯蓄ができることが予測されるからです。

ただ、今後の展開で気を付けていただきたい点が、投資です。今後は投資を積極的にされたいとお伺いしていますので、大きな投資に挑戦することも予想されます。そういった場合でも、お子さんの学費を確保するために学資保険に入るのはアリだと思います。月々1万円程度であれば積立預金感覚で行え、家計の負担にはなりません。まずはこのあたりの金額からスタートしてみてはどうでしょうか。

フリーランスなら不動産投資がおすすめ

フリーランスの方に本来おすすめしたいのは、不動産投資です。なぜなら、まるでお給料があるかのように毎月チャリーンチャリーンとお金が入ってくるからです。もちろん、ご指摘の通り、不動産運用にはまとまった資金が必要になります。しかし、それを差し引いても、フリーランスの身にとって、毎月安定した収入があるという安心感は何物にも代えがたいのも事実です(私がそうでした)。

ただしフリーランスですので、ご商売の年数によっては融資を組むことが難しいかもしれません。そのあたりは物件の収益性との兼ね合いになります。今すぐに不動産投資をしないにしても、知識を蓄えておけば、マイホームを買う際などによい目利きができるようになります。

まずは仕事に集中を、投資はその後

次は株についてですが、質問者の現在の投資方針は、短期的な売買益を狙う方法であるため(IPOや下落株狙い)、ある程度張り付いて株式情報を収集する必要があると思います。ただし、質問者はフリーランスの自営業です。本業に支障がでるような投資方法はおすすめできません。

もちろん資産運用で資産を増やすことは大切ですが、自営業の場合、まず集中すべきは目の前の仕事です。ですから、現状の投資方針よりも、むしろ長期保有による投資(2年から5年程度)を意識した投資に切り替えるべきかと思います。具体的には、株価が大きく下落したタイミングで、あらかじめ目をつけておいた数社の株のうち1つを購入し、その株を1年以上長期保有し、配当も受け取りながら様子を見るのがよいでしょう。

それは自営業の場合、毎日毎日の仕事への集中力が成果に直結するからです。今は大変な時期かもしれませんが、現在の提携取引先を少しでも増やせるように、土日なく働くことが大切かなと思います。本業の収入が増えればもちろんタネ銭は増えますし、なにより住宅ローンや不動産投資用のローンを組む際の条件も有利になります。

長期投資から始めて、ゆくゆくは不動産投資へ

まとめとしては、以下のような流れになるかと思います。

1.まずは「いい会社だ!」と思える会社を数社ピックアップ
2.日経平均が全体的に下がったタイミングで購入
3.お子さんがいることも考え、金融資産のうち投資に回すのは最大で4割にする
4.あとは配当を受け取りながら2年から5年程度の間保有する
5.投資はその程度にして、本業に集中し、貯金と信用(融資のため)を作る
6.信用ができたタイミングで不動産投資も考える

また、質問者の文章で一番好感をもったのは「今の仕事が好きです」という部分です。自分の仕事が好きな方は必ずフリーランスでも成功します。まずはそちらに十分な時間をかけ、利益を増やし、結果としてタネ銭と信用を増やしていくことを意識してください。そして、投資を始めるのであれば、より時間を取られない株式の長期投資から始め、将来、不動産投資を目指せばよいと思います。

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