家電を例に考えるAIモデル

AIモデルの中身について、もう少しお話ししていきましょう。仕組みは最もシンプルでありながら、AIの基本として広く使われているのが「ニューラルネットワーク」です。

ニューラルネットという言葉をインターネットで検索すると、「人間の脳神経系のニューロンを数理モデル化した組み合わせ」とか「人間の脳の仕組みから着想を得て、コンピュータ上で表現する」とか、難しい説明が並びます。

何となく人間の頭をコンピュータで真似しているんだなという印象を持ちますが、何だかピンと来ません。そこで、構造をわかりやすく整理してみます。皆さんの身近にあるテレビ、冷蔵庫などの家電メーカーの株価を予測するAIを例に考えてみましょう。

東京証券取引所では、33業種の株価指数を公表しています。これは東証1部の上場企業を33の業種に分類して、それぞれの業種の株価の動きを算出したものです。家電メーカーは「電気機器」という分類に該当します。

そこで、下の図2を使って、電気機器の将来の株価を予測するニューラルネットのAIモデルについて、説明したいと思います。

入力するデータは、電気機器の業績や株価に影響を与えそうな経済指標や市場データを使います。つまり、図1の❶に位置するモデルです。こうしたデータはニューラルネットの「入力層」と呼ばれます。これに対して、「出力層」は電気機器の株価の月次騰落とします。

ニューラルネットには「中間層」と呼ばれるものもあります。ここには「ニューロン」という箱がいくつかあります。入力層のデータが中間層のニューロンを通って、出力層の月次の株式収益と関係しています。

ニューロンの階層はどうなっているのか

家電メーカーの業績や株価を考えるには、国内での家電の売り上げが気になりますよね。そうなると、個人消費が大きく関連します。個人消費が盛り上げっていれば、電気製品を買おうという人も増えるからです。

個人消費のデータで最も一般的なのが、GDPで発表される内訳の「個人消費動向」です。他にも「失業率」の動向も注目です。雇用環境が悪いと、家電を買う余裕を持つ人も少ないからです。

GDPは3ヵ月おきにしか発表されません。GDPの個人消費だけでは、足元の本来の個人消費をとらえるのに遅れてしまいます。ですので、他の情報も合わせて集計することで、足元の個人消費がどの程度か、という情報ができます。これが中間層の最初のニューロンとイメージされます。

入力データの層が第1層と数えるため、中間層の最初は第2層と数えます。第2層の別のニューロンは「住宅投資」です。住宅が増えて引っ越しが増えれば、家電を買い替える人も増えます。

第3層目は、こうした個人消費や住宅投資など景気に関する要因を集計して、国内景気全体のニューロンができると考えましょう。

ただし、日本の家電メーカーは輸出もしています。そうなると、米国や欧州などの売り上げも気になります。世界経済が好調なら、日本の輸出も増えるからです。第4層目のニューロンは、日本も含めたグローバルの景気要因とも考えましょう。

電気機器の株価予測はいかに?

実際のニューラルネットによるAIのモデルでは、こうした経済の構造を解釈しているわけではありません。それぞれのニューロンはデータの当てはまりで決まり、入力データと出力データの関係が最も強い関係があるところでモデルが特定されるのです。

しかし、ニューラルネットを理解するうえでは、上記のように構造をイメージすると、そういうものなのだなと考えて、わかりやすくなると思います。

それでは最後に、ニューラルネットを使って6月末時点のデータを入力して、電気機器業種の7月の株式収益を予測してみましょう。結果は2.58%となりました。われわれが作ったAIモデルから予測すると、電気機器メーカーの7月の株価は堅調な推移が予測されます。