はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。
現在、夫婦共働きですが、離婚を考えています。ただ、結婚してから今まで、夫からの援助などはほとんどなかったに等しく、現在60万円程度の貯金しかありません。転職と離婚、そしてシングルマザーとしての生活には大体どれくらいのお金が必要になってくるのでしょうか。また、子育て中に上手に貯金するコツも教えていただきたいです。
〈相談者プロフィール〉
・女性、20代後半、既婚、子供1人(2歳)
・現在の手取り収入:15万円(妻のみ)
・現在の支出:15万円
・総金融資産:現金と不動産がありますが、それぞれ夫所有、父会社所有
・負債:夫名義の住宅ローンが3,000万円
・保険:生命保険、個人年金保険に加入
野瀬: 最近は離婚も当たり前になってきて、私の周りでもシングルマザーになる人が増えてきています。しかし、日本の法制度や行政はまだ、この傾向に対応していないと思いますので、しっかり数字でシミュレーションして自己防衛することが必要になります。
“住まい”によって大きく変わる支出
まずは一般的なシングルマザーの家計についてお話しておきたいと思います。
現在、15万円×12ヵ月で単純に手取り年収は180万円になるかと思います。一方、支出は「住まいがどこか」により大きく変わってしまいます。
仮に関東圏だと考えると、なかなか負担は重くなります。当然、東京都に住んでしまうと、その傾向が強いですので、少し不便ですが千葉、埼玉の築古物件で我慢すれば、家賃は5万円前後のものでも30平方メートルは確保できます。
この広さであれば、とりあえずお子さんがもう少し大きくなっても住むことは可能かと思います。
生活費の適切な内訳は?
家賃に加え、それ以外の家計ですが、ざっくりイメージすると以下のようになると思います。
<生活費の内訳>
・家賃:5.5万円
・水道光熱費:1万円(平均値)
・通信費:1万円(格安スマホ等の利用により引き下げる)
・食費:2.5万円
・日用品費:1万円
・生命保険:0.5万円(ネット保険等で月0.5万円以内に抑える)
・予備費:1万円(使わない場合は積立)
・保育費:0.5万円(自治体による)
・学資保険:1万円(貯金だと思ってこの程度は積み立てておく)
合計支出金額は14万円となり、15万円から14万円を引いた差額1万円が、毎月の積立になるかと思います。
また、児童手当が年齢により1万~1.5万円、さらにシングルマザーであれば児童扶養手当が所得に応じて1万~4万円出ますので、実際はもう少し余裕がでると思います。
また転職という話もありましたが、よほどの話がなければ今の職にとどまったほうがよいと思います。それは、悲しいかな大部分の日本企業はシングルマザーを避ける傾向にありますので、転職活動をしても、今の状態ですと条件が悪い職場に決まってしまうことが予想されるからです。
今の仕事が楽しかったり、職場の人間関係も良好なのであれば、目先の1万円の給与増などにこだわらなくてよいと思います。
子育て中でも上手に貯金するコツ
子育て中でも上手に貯金するコツについては、以下の3つを参考にしてみてください。
(1)養育費や手当に慣れないこと
離婚の場合、養育費や上記の児童扶養手当を受け取れますが、これを織り込んだ家計の予算を立ててしまうと、養育費がストップした時や法律が改正された時に、にっちもさっちもいかなくなります。 **
統計上、養育費の支払いというのは数年程度で止まってしまうので、期待が持てないのと、最近ようやく政府も子育て支援について言及することになったものの、まだまだ安心はできないからです。
大切なのは、一見ハードルが高いように見える前述の支出構成に「慣れる」こと、そして養育費や各種手当がもらえたら、それらを全額貯金に回すつもりで備えてください。
(2)投資にはまだ手を出さない
貯金もまだ60万円程度しかないことを考えても、今はこの貯金を手厚くするべきです。少なくとも300万円、つまり、1年半働かなくても生活が回る体制くらいの貯金を確保するまでは、コツコツ貯金を積み上げてください。投資を考えるのはそれからです。
決して今は余裕がある水準ではありませんので、まずはその水準までもっていくことが大切です。
(1)を守っていれば年30万~50万円ぐらいの預金の積み増しはできると思います。幸か不幸か、不動産も株も決して安いといえる相場ではありませんので、今は貯金に専念するとよいでしょう。
(3)頼れるものは何でも頼る
これは真面目な方が陥る問題なのですが、親戚や行政、どちらに対しても頼れるものには頼るべきです。
特にシングルマザーの場合、仕事でお子さんのお迎えが遅くなることもあると思いますので、そのあたりをご両親やご兄弟の助けが得られるのであれば、ダメ元でお願いしてみるべきだと思います。
これは私の個人的な印象ですが、まだまだ日本も捨てたものではなくて、職場でいろいろな悩みなどを打ち明けると、世の中の人は意外に相談に乗ってくれたり、よい話を紹介してくれたりします。「頼る」までは行かなくても「相談する」はどんどん試してみるとよいでしょう。
働いて納税もして、お子さんも育てるというのはそれだけで十分世の中に貢献をしていますので、胸を張って頼れるものがある場合は素直に頼るべきです。