はじめに
ロボアドバイザーは日本の投資家に受け入れられるか
ーーリスクとリターンは表裏一体であることは理解していても、投資家はやはりリスクを抑えながらリターンを上げていきたいと考えるものです。こうしたニーズにTHEOはどのように応えていますか。
THEOのアルゴリズムを設計するにあたって、内外で発表された数多くの研究論文を調べました。伝統的な投資理論ではリスクと期待リターンを算出してポートフォリオを作りますが、アルゴリズムではリスクと期待リターンの両方を考慮したものより、リスクだけを徹底して計算するほうが結果として高いリターンを上げていることがわかりました。THEOでもリスクを綿密に計算してアルゴリズムを設計しており、それが安定したリターンにつながると考えています。
THEOのアルゴリズムは日々、改善を重ねていますが、今後は投資家のニーズに応える機能をさらに追加していきたいと考えています。たとえば、人によっては退職の年や子どもの進学など、資産運用のゴールとなる時期が明確になっていることがあります。こうした人のために、資産運用を終える目標年を設定した商品も検討しています。また、最低投資金額をより小さくしたり、リスクの幅を投資家が選択できたり、ロボアドバイザーに預ける資産以外の金融資産も考慮したプロファイリングとポートフォリオづくりといった新しい機能も考えています。
ーーロボアドバイザー投資は、日本でも普及するでしょうか。
日本で従来からある富裕層向けの投資一任サービスである「ラップ口座」は手数料が高いうえ、運用資産も数百万円から数千万円必要になり、一般の人々には手が届きませんでした。
しかし、THEOを始めとするロボアドバイザーであれば、運用資産の1%程度とラップ口座の半分から3分の1の手数料でおまかせ投資ができます。さらに、10万円と小額の運用資産から始められるTHEOのようなサービスは、これまで投資とは縁がなかった人たちが資産運用を始めるチャンスとなるだけでなく、投資経験の豊富な層にとっても改めて分散投資の重要性を認識するきっかけにもなり、潜在的な需要は大きいのではないでしょうか。
発祥の地であるアメリカでは数年以内にロボアドバイザーの運用資産は数兆ドルに達すると言われます。これだけ支持される理由は、なんといってもコストの安さです。最大手であるウェルスフロントでは、運用手数料は1万ドルまでは無料で、それを超えた分も0.25%と圧倒的な低コストを実現しています。
実際にここまでコストを下げるにはブローカーなどを通さず自社で直接取引できるといった条件も必要になるので、日本でも同じ水準まで下げられるとは言いきれません。それでも、利用する投資家や参入する金融機関が増えて競争が激しくなれば、運用コストは今よりも下がる可能性はあるでしょう。そうなれば、投資家にとってメリットはより大きくなります。弊社でも、保有資産の大小を問わず、多くの人々に質の高い国際分散投資を低コストで提供し、資産形成をサポートしていくことが何よりの使命だと考えています。
マルコム・シュライバー G.Malcom Shreiber/(株)お金のデザイン チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)。コロンビア大学修士学位(応用物理学)修了。1997年野村IBJグローバルインベストメントアドバイザーに入社し、ファンドオブファンズにおけるクオンツ分析グループ・マネージャー・セレクション及びリスク管理を統括。あすかアセットマネジメント、MU 投資顧問(MUFGグループ)などで、相対価値金利アービトラージファンドを設計、開発し、運用の責任者を務めた。