はじめに

かかるコストはどの程度?

投資信託にかかる一般的な費用である購入時手数料と信託報酬も見てみましょう。

今回は大和証券のみでの販売であるため、1億口未満の場合は税込みで1.08%の購入時手数料がかかります。信託報酬は税込みで年率0.3132%(有価証券届出書提出日時点、2018年6月25日)となっていますが、0.32%程度と想定される固定クーポンを充当すると記載されています。

また、一般的な投資信託にはない費用として、本商品はクーポンが固定部分と実績連動部分の2種類に分かれており、実績連動部分については成功報酬として税込み10.8%が差し引かれます。

実績連動部分については、アセットマネジメントOneの計量モデルに基づき資産配分が決定され、ゴールドマン・サックスにより機械的に年率3%程度に価格変動リスクがコントロールされると記載されていますが、国際分散投資戦略のパフォーマンスは、2007年から2017年までの年次リターンの平均は2.1%(戦略控除率<年率1.0%>、複製コスト等控除後)とシミュレーションされています。

元本確保型の仕組み

元本を確保しつつ、さらに少しリターンを乗せていく運用方法について、簡単に説明します。

たとえば、投資可能な金額が100万円あるとします。毎年3%のクーポンがつく債券を77万円分購入すると、毎年2万3,100円の利子がつきますから、10年間保有すると、満期償還時には元本の77万円と10年分の利子23万1,000円が手に入ります。すると、手元には合計して100万1,000円があるわけです。

ということは、投資金額100万円のうち77万円で毎年3%のクーポンが付く債券を購入し、残りの23万円を先物やオプションを使って運用すれば、10年後の100万円を確保しながら、さらなる上乗せも狙えるのです。

特にオプション取引であれば、運用がプラスの時はそのまま利益を受け取り、損失が発生した場合はオプションを放棄すればいいだけですから、利益は青天井で、コストはオプション取引にかかるコストだけになります。


ゴールドマン・サックスにとっては通常の社債発行よりも低い金利で資金調達ができる(写真:ロイター/アフロ)

本商品について、公開されている資料では読み解けませんが、ゴールドマン・サックスから見れば、通常の社債発行による資金調達よりも低い金利での資金調達ができてしまっているわけです。仮に上記のような運用方法であるならば、オプション取引にかかるコストを自己負担するぐらいであれば、大したコストではないかもしれません。

前述のように、本運用は価格変動リスクが3%以内になるようコントロールされているため、オプション取引のコスト自体も、そこまで大きなものにはならないと考えられます。

「貯蓄から投資へ」の実現に向けて

本商品は最低購入金額が300万円からであることや、基本的には10年間保有し続ける前提の商品設計であることを考えると、本商品だけで投資の裾野を広げるのは厳しいと思います。また、本商品は最近の主流である「追加型」の投資信託ではなく、「単位型」の投資信託であるため、個人投資家が好きな積み立て投資などもできません。

今回の件を鑑みると、スワップやオプションを使った仕組み債などの複雑なものではなく、小額から購入できて、積み立て投資もできるシンプルで為替リスクのない投資商品は本当に今の日本の個人投資家には求められていると再認識できました。今後はそのような商品が開発・運用され、本当に投資家の裾野が広がっていくことを期待しています。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)

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