はじめに
専業主婦はシェア志向が弱い?
ところで、女性では「無職・専業主婦」のシェア志向の弱さが目立ちます。でも、先ほども述べましたが、フリマアプリでは主婦が積極的な印象もあります。
例えば、着られなくなった子ども服や使わなくなったおもちゃなど、家庭で使わなくなったモノが売買される状況がよく見られます。専業主婦は全体で見るとシェア志向は弱いはずなのに、なぜフリマアプリでは積極的な状況が見られるのでしょうか。
専業主婦について詳しく見ると、女性全体と比べて、「ものは買うより、できるだけレンタルやシェアで済ませたい」という意識が強くなっています。
一方で、ネットの個人間売買には抵抗が強い傾向があります。つまり、専業主婦は家計の節約意識などから、シェアリングサービスを活用して安く済ませたいという意識が強いのですが、ネットを介した個人間売買への不信感はネックとなっているようです。
裏を返すと、専業主婦に利用が広がるフリマアプリでは、信頼性や安全性を上手く訴求できているということなのでしょう。
安くすませたい年収300万円層、こだわりの年収1千万円層
年収別にも興味深い特徴があります。シェア志向の強さは、男女とも年収「200~400万円未満」にピークがあり、男性では「1,000~1,200万円未満」にもピークがあります(図3)。1つ目のピークでは、男性は20~30代、女性は30代前後で、非正規雇用者が比較的多くなっています。
この層の男性は中古品でも構わない意識が強く、女性は比較的堅実な消費態度を持ちながら、ネット購買を好み、ネットでの個人間売買への抵抗が弱いという特徴があります。つまり、年収「200~400万円未満」の層では、主に経済的な理由から中古品やシェアを利用しているようです。
一方で、男性の「1,000~1,200万円未満」のピークは40~50代で正規雇用者が多くなっています。この層は、自分の価値観やライフスタイルを重視する傾向が強く、ネット購買を好み、ネットでの個人間売買への抵抗が弱いという特徴があります。
つまり、安くおさえたいというよりも、モノによっては(例えば消耗品など)コスパを重視するという合理的判断のもとで、中古品やシェアを利用している可能性があります。調査では「価格が品質に見合っているかどうかをよく検討する」というコスパ意識に関する問いものがあるのですが、このコスパ意識は年収1,000万円までは年収とともに高まりますが、年収1,200万円以上ではやや低下します。なお、年収1,200万円以上ではシェア志向も弱まります。つまり、年収1,000万円まではある程度コスパを意識しても、年収1,200万円を超えると、そこまで意識しなくても良いという経済的余裕が生まれるのかもしれません。
子育て世帯で強いシェア志向
さて、カーシェアやフリマアプリなどの利用は、独身か既婚か、子どもがいるかどうかでも違いがあるでしょう。同年代でもライフステージの違いが大きな30~40代に注目すると、男性は「末子未就学」で、女性は「末子義務教育」でシェア志向が強くなっています(図4)。
子育て世帯では可処分所得が減少する中で、できるだけ消費を減らして貯蓄をする傾向が強まっています。特に子どもが小さいうちは、おもちゃや洋服など一時期しか使わないものへの出費がかさむため、子育て世帯はフリマアプリを利用した中古品の売買に適した層とも言えるでしょう。