はじめに
コスパ時代の資金づくりは節税にあり
それでは、どうして金利0.01%の定期預金を「個人型DC」にすると20%になるのか、そのからくりをご説明します。
それはズバリ、「所得控除」です。「個人型DC」の拠出金は、すべて「所得控除」になるからです。
サラリーマンの所得税は、次の計算式で算出されます。
サラリーマンの場合、「給与所得の源泉徴収票」を見ると、年間の給与の収入金額が書いてあります。これがいわゆる「税込年収」です。
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「税込年収」から「給与所得控除額」を差し引きます。給与所得者は、勤務にともなう必要経費を概算控除できることになっています。これを「給与所得控除額」といいます。「給与所得控除額」は、給与の収入金額に応じて定められています。
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次に各自の「所得控除額の合計額」を差し引きます。「個人型DC」は、「小規模企業共済等掛金控除」に当たります。つまり、「所得控除」ができるということです。
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「税込年収」から1と2を差し引いたものを「課税所得金額」といい、この金額に対して所得税額が課税されます。
このように、「所得控除」できるということは、所得税を計算する課税所得金額を減らせるということです。
例えば、Aさんは、毎月「個人型DC」の定期預金に3万円ずつ拠出したとします。年間36万円です。個人型DCに拠出した場合、この36万円が「所得控除」できます。つまり、Aさんは、36万円分の所得をなかったことにできるのです。
その結果、Aさんの所得税率が10%だとすると年末調整することで、所得税3万6,000円(36万円の10%)が還付され、翌年度の住民税3万6,000円(36万円の一律10%)が減額されます。所得税と住民税を合わせると、7万2,000円。年間36万円拠出して、7万2,000円戻ってくるということは、実質利回り20%となります。
つまり、Aさんは、個人型DCに年間36万円拠出して、定期預金で運用した結果、年間36万円の定期預金を積み立てでき、さらに税金7万2,000円を取り戻せるということです。しかも、これが毎年続きます。20年間続けると144万円にもなります。
NISAのいただき方:虎の子は非課税で育てる
マイナス金利が導入されてからというもの超がつくほどの低金利が続きています。先ほど、銀行の定期預金金利は、0.01%程度とお話ししましたが、これでは100万円を1年間預けても、100円しか利子がつかない計算に。
でも、現実はもっと厳しいのです。預金の利子に対して、所得税(復興特別所得税込み)と住民税が源泉徴収されるからです。この税率は、なんと20.315%。残念ながら、マイナス金利でも税金は安くならないのです。せっかく虎の子の100万円を預けても、税引き後の利子は約80円たらず。ミネラルウオーターすら買うことができません……。
でも安心してください。ここにも税制優遇措置があるのです。それが「NISA」(ニーサ)です。NISAとは、平成26年1月から始まった「少額投資非課税制度」の愛称です。うまく制度を使えば、運用して得られた利益がまるまる非課税になるので、とってもお得です。どれくらいお得なのか、ちょっとイメージしてみましょう。
今、みなさんは10万円を手にしています。「あなたはNISAを利用していますか?」と聞かれて、「はい」と答えたら10万円はそのまま。でも、「いいえ」と答えたら、手中の10万円は、一瞬のうちに7万9,685円に減ってしまいます。
この差額の2万315円あれば、何ができるでしょうか? 高級フレンチのディナーでグラン・シャトークラスのワインだってオーダーできるし、老舗旅館で美食とお風呂を堪能する一泊二日の温泉旅行だって行けてしまいます。
NISAを使えば、まるまる利益をもらえますが、使わなければ2割引に。まるまる利益を手にした方がその分、楽しみのためにお金を使うことができるのです。
NISAを使うといくらまで非課税にできる?
では、NISAを使うといくらまで非課税にできるのでしょうか。まず、投資(買付)できる上限額は、年間120万円までです。NISAが始まったときは100万円でしたが、2016年1月から120万円に引き上げられました。非課税適用期間は、最長5年です。ということは、毎年120万円を投資して、それぞれ5年間保有していくと、5年目の投資総額は、1年目、2年目、3年目、4年目、そして5年目の120万円を合計した600万円になります。
これを、毎年3%で運用できたとしたら、5年目の利益は、600万円×3%だから、18万円になります。非課税のNISA口座なら18万円がまるまる手に入りますが、通常の課税口座(特定口座や一般口座)だと、18万円に対して20.315%が課税され、3万6,567円差し引かれてしまいます。こうやってみるとNISAの非課税メリットは大きいですね。
このように「ふるさと納税」「個人型DC(iDeCo)」「NISA」など、税金の優遇措置を賢く活用することでお得にお金を増やすことができます。
今回はそれぞれのポイントしかお伝えしましたが、詳しくは、拙著『やってみたらこんなにおトク!税制優遇のおいしいいただき方』をご覧いただけるとうれしいです。