証券取引所と聞いて、どんなことを行なっている機関なのか具体的に思い浮かべられる人は意外に少ないと思います。また、一般の人は近寄りがたいイメージもありますよね。

でも実は、日本橋兜町にある東京証券取引所は、誰でも見学ができます。知られざる証券取引所の中を見てみましょう。


「東京証券取引所」って?

証券取引所とは、名前の通り証券を取引を行っている場所です。証券とは株券や債券といった、会社にお金を投資したり貸し付けたりすることで得られる、いわばチケットのようなもの。このチケットを持っていることで、会社の利益の一部を受け取ったり、貸し付けていたお金の利子を受け取ることができます。

東京証券取引所(以下、東証)では、株式を中心に証券の売買がスムーズに行われるよう、買い手と売り手の場を管理運営しています。株式の取引を行う証券取引所は、東京・名古屋・福岡・札幌の4カ所にありますが、その中でも、東証では全体の約95%にあたる取引が行われています。

1878(明治11)年に東京株式取引所として開業し,1943(昭和18)年に日本証券取引所に改組されましたが、1945(昭和20)年の終戦に伴い閉鎖。しかしその後1949(昭和24)年に東京証券取引所として改めて設立されました。

ニュース番組でおなじみのあの電光掲示板

取引所の中心には、「マーケットセンター」と呼ばれる、直径17mの巨大なガラスのシリンダーがあります。上部にはぐるぐると巨大電光掲示板が回っています。ニュースなどで一度は見たことがある光景ではないでしょうか。

この電光掲示板は「チッカー」と呼ばれていて、成立した取引の情報が流れています。文字は3行になっており、上から会社名、1株あたりの最新株価、前日の終値との比較が表示されています。

なぜガラス張りかというと、市場の透明性・公正性を象徴しているから。

チッカーは内側と外側に画面がありますが、同じ内容が互いに逆方向に回っています。取引量が増えるほど、8段階で回る速度は速くなります。一番遅いときは秒速40cm(時速1.44km)、最も速いときで秒速3.2m(時速11.52km)。この電光掲示板が完成した2000年当時と比べて取引量が大きく増えていることもあり、現在では一番速い速度で回ることも珍しくないそうです。

カラスシリンダーの内側は、東証の職員が業務を行うワークスペースになっています。ここでは証券会社から出された売買注文や成立する株価を、パソコンを使い、リアルタイムで監視しているのです。不正の疑いなど、少しでも疑問が生じた場合、社内の調査専門の部署と連携して、証券会社に直接問い合わせをするなど、細かくチェックしています。

ガラスシリンダーの横には、2フロアに分かれた「メディアセンター」が設置されています。(写真中央の白い格子状の部分)

メディアセンターは国内のテレビ局、経済専門チャンネル、ラジオ局など、報道関係各社がカメラを構える放送センターとして機能しています。よくテレビで見るあの風景は、ここから撮っているんですね。

企業の繁栄を願って鳴らす「上場の鐘」

企業が新規上場する際には、企業の繁栄を願って、鐘を鳴らすのが慣例になっています。鐘は「上場の鐘」と呼ばれており、これを鳴らすときは企業の代表や役員にとって特別な瞬間だと言われています。

鐘を鳴らす回数は5回と決まっていますが、その由来は「五穀豊穣」の「五」。会社が豊かに成長するようにと願いが込められています。

ニュースなどで見かける機会もある「上場の鐘」は、施設内を巡る回廊から見える形で展示されています。

秘密の開運スポットが施設内に!?

一般見学の入口とは逆の東口の玄関ホールには、風水スポットがあります。マーケットセンターの周囲を巡る回廊の途中から見下ろしてみると……

十二干支が描かれた円盤が、床にはめ込まれています。

この玄関の向いている方位は南東(辰巳)。風水では、この方角に玄関を構えるといい運気が入ってくるといわれています。

また、円盤の真上の天井には、扇形のステンドグラスがあります。「末広がりで縁起が良い」ということで、現在の東証の建物の建設時に設置されました。幅の広い方が、施設内を向いています。

史料ホールで昔の証券や道具を見る

施設1階の出入口付近にある証券史料ホールでは、1868(明治元)年から1970年代までに使用されていた道具や、証券関連の史料が見学できます。

入口にある金属製の重厚な壁は、東証がまだ東京株式取引所だった1931(昭和6)年に建てられた「本館ドーム」で使用されていた扉。取り外され後、この場所に移設されているのです。大きさは縦約4.0m、横4.3mほど。

素材は丹銅という銅と亜鉛の合金。レトロな雰囲気で存在感がありますね。

史料ホールでは、昔の証券も見られます。

こちらは明治初期の「大日本帝國政府金祿公債」。各藩に仕えて俸禄を得ていた武士は、明治維新で定期収入がなくなりました。その代償として、明治政府から交付されたのがこの公債でした。

よく見ると、公債の下にチケット(利札)が付いているのがわかりますか?「利金参拾五銭」と書かれています。これを切り取り銀行に持っていくと、現金と交換できる制度になっていました。

上場会社の株券は2009年から電子化し、現在は発行されていませんが、株券があった時代の、さまざまなデザインの株券も見ることができます。例えばこちらは南満州鉄道株式会社の株券。下部には機関車のイラストが書かれています。

靴下やストッキングで有名な福助株式会社の株券はこちら。

他にも、サンリオの株券はキティちゃんなど、各社でおなじみのキャラクターがプリントされた株券が発行されていました。アナログ時代ならではの遊び心ですね。

さらに昭和初期頃に使用されていた、帳簿の罫引きやそろばんなどの事務用品の展示を見ることもできます。

昔のコンピュータに関する展示も見ることができます。実は日本で初めて商用コンピュータが導入されたのは東証。

1949(昭和24)年、証券市場が開かれると、景気上昇のために株式取引が増加し、作業量も急増しました。とうとう1953(昭和28)年2月12日には、午前立会の売買照合が間に合わず、午後の立会が休業する事態が起こったのです。そこで、東証はコンピュータ導入に至りました。

初めて導入されたレミントン・ランド社製(現:日本ユニシス株式会社)の計算機の実物はありませんが、写真で見ることができます。1974(昭和49)年に実用化された、日立製作所製の相場報道システムのコンピュータは実物が展示されています。

現実の相場に即したリアルなゲーム

東証には、投資の売買がゲームで体験できるコーナーがあります。

株に興味はあるけど、いきなり実際に始めるのはちょっと抵抗がある……という人におすすめのシミュレーションゲームです。団体利用が多いですが、個人でも利用できます。(要予約)

操作は各自専用のタブレットで行います。所持金1000万円からスタート、ゲーム内では、3つの架空の会社の株を売買取引します。

相場と同じように、株価がリアルタイムで変動する中、自分のタイミングで売買を行い、利益を出せるように進めていきます。株価以外にも、景気回復宣言や為替変動などのニュースが画面上に表示され、それに応じて株価が上下するので、かなりリアル!

ゲームは30分経つと終了。最終的な資産総額が表示されます。複数でプレイした場合は、順位も表示されるので、誰が一番儲けられるか、競争してみるのもいいですね。

予約不要でプレイできるコーナーも2台あり、こちらは時間に関係なくプレイ中いつでも終了できます。

お土産専用の自動販売機

東証では、オリジナルグッズの販売を自動販売機で行っています。お土産品の自動販売機なんてユニークですよね。

一番人気は、商業の神様が祀られている兜神社のお守り(500円)。1878(明治11)年以降、兜神社の氏子総代は東証が勤めており、東証とは縁の深い神社なのです。


(写真:東京証券取引所)

お守り以外にも、タオルやTシャツなどグッズの種類も様々。グッズは売れ切れ次第終了。時期によって、新たなラインナップが加わります。


東京証券取引所の知られざる内側、開運風水が盛り込まれていたり、一般向けの史料ホールがあったり、意外と身近に感じられる部分もあったかと思います。見学は時間内であれば自由にできるので、株やお金に興味を一度足を運んでみるとさらに面白いかもしれません。

東京証券取引所

住所:東京都中央区日本橋兜町2-1、東西線・茅場町駅10番出口から徒歩5分、見学時間:9時〜16時半(最終入場16時)入館無料、TEL:050-3377-7254(見学専用)

文=佐藤成美(風来堂) 撮影=今田 壮(風来堂)※クレジット表記以外