「同業他社と比較しても、京急沿線は人口減少や高齢化の進展が早い段階で見込まれています。事業エリアにおけるさまざまな課題を成長の好機ととらえ、スタートアップに異業種企業や自治体も含めたオープンイノベーションで事業開発を進めていきたい」

11月21日に開かれた「京急アクセラレータ・プログラム」に関する記者説明会で、京浜急行電鉄の沼田英治・新規事業企画室部長は、プログラムの狙いをこう説明しました。

オールドエコノミーの代表格である鉄道会社が、スタートアップ企業との連携によって、どんな事業展開を構想しているのでしょうか。説明会でのやり取りを深掘りしてみます。


来年3月に5社程度を採択

京急電鉄が11月21日から募集を始めた、京急アクセラレータ・プログラム。「モビリティを軸とした豊かなライフスタイルの創出」をテーマに、スタートアップ企業との連携を模索。2019年4月から実証実験をスタートさせたい考えです。

今回のプログラムにおいて京急がタッグを組んだのが、シード(創業期)出資に特化した老舗ベンチャーキャピタル(VC)のサムライインキュベートです。2008年の設立で、日本、イスラエル、ルワンダの3拠点で事業を展開。これまでに150社への出資を行ってきました。

今後のスケジュールは、12月10日にスタートアップ向けの説明会を実施。2019年1月18日に募集を締め切り、3月18日の事業審査会で5社程度を採択する予定です。その後、4ヵ月間の実証実験を経て、8月に成果発表会を開催します。

「鉄道会社のビジネスモデルは、ベッドタウンを作り、その周りに生活の付加施設を作って、沿線人口を増やし、輸送人員を上げていくというものでした。しかし、人口減少や高齢化の中で、そのモデルが限界に来ています」と、京急電鉄の沼田部長は振り返ります。

そのうえで、「今後、過去のような人口増が見込めない中で、エリア間競争になります。京急沿線の住む魅力、訪れる魅力、便利であることを利用者にわかりやすく訴えかけていくことが大事」と、今回のプログラムの意義を説明します。

交通手段によるシームレスな地域連携

一連のプログラムで目指すのは「地域連携型MaaS」の実現。MaaSとは「モビリティ・アズ・ア・サービス」の頭文字を取ったもので、交通手段を1つのサービスとしてとらえ、それらをシームレスにつなぐことで新たな価値を創造することを指します。

今回の京急のプログラムでは、「移動」「くらし・働き方」「買い物」「観光・レジャー」の各テーマで顧客体験を高める、新しいサービスをスタートアップと生み出すことを目標にしています。より具体的には、各テーマで以下のような取り組みを想定しています。

「移動」: 移動そのものを便利にしていく取り組み
「くらし・働き方」: 高齢化や人口減少が進む沿線の街において、暮らしや働き方をより豊かにしていける事業
「買い物」: 駅ナカ、駅近という立地を生かして、新しい買い物体験を生み出す。人手不足に対してテクノロジーで解決することも含む
「観光・レジャー」: 三浦半島の魅力を引き出すことができる取り組み、宿泊施設における新しい価値を生み出せる取り組み

この4つのテーマと沿線地域をつなげる「テクノロジーの活用」を含めた、5つのテーマでスタートアップの参加を募ります。


アクセラレータプログラムの5つの募集テーマ

採択企業が受けられるメリットは次の4つ。1つ目が、京急のアセット(資産)を活用した実証実験。2つ目が、サムライファンドからの出資検討。3つ目が、社内外の各分野のアドバイザーからの支援。4つ目が、横浜、横須賀、三浦各市によるサポートです。

「単に箱としてのサービスを連携させるだけでなく、沿線で得られる体験をどう有機的に連携して、魅力を発信していけるか」。MaaSの前に「地域連携型」という言葉を加えた狙いを、沼田部長はこう説明します。