前回の筆者記事(11月8日付「投資成果に直結!簡単にできる企業決算分析術とは」)では、企業の業績を3ヶ月に分解する分析手法をご紹介しました。企業は決算短信で業績の累計値のみ発表するのでそれを3ヶ月に分解すると、累計値で見るのとは異なる実態が浮かび上がってくることがあるというものです。

また、以前の記事では、株価と企業の業績は密接に関係し、長期的に業績が拡大していく銘柄は株価も長期的に上昇していくことをご紹介しました。

これらのように、ある企業の過去の業績に着目しヒストリカルに分析していくことは言わば“縦”の分析です。本日はさらに分析精度を上げるために、視点を変えた“横”の分析についてご紹介します。


“横”の分析とは?

例えば、皆さんがある銘柄を分析したところ(1)過去の業績がしっかりと伸びており(2)足元の3ヶ月の決算も好調で(3)PERやPBRといった株価指標にも割高感がないことがわかり「チャンスだ!」と考えたとします。

もちろんこういった分析をするだけでも非常に有効ですし、“株価がなんとなく安そう”のような理由だけで投資するよりも成果は格段に上がりやすいと思います。ただもし可能であれば、もう一段の分析を追加していただきたいと思います。それが“横”の分析です。

“横”の分析とは、ある会社を競合他社や同じ業態の会社と比較することです。例えばある会社のPERが8倍だとします。投資の本などを読むと「一般的にPERが10倍を割り込んだら割安」のように書かれていることがあります。

それを当てはめるとPER8倍は割安ということになりますが、ことはそう単純ではありません。そのPER8倍が本当に割安で投資対象として魅力的なのかどうかは、他の会社と比べてみなければわからないのです。具体例で見ていきましょう。

“縦横”両面から分析してみよう

くら寿司という回転寿司を展開するくらコーポレーションという企業があります。業績は長年拡大しており、足元の業績も好調です(下図)。

くらコーポレーションの株価推移を見ると、6月につけた高値8,000円どころから足元では7,000円程度まで株価が下落しています(下図)。

現在の予想PERは28倍で、夏場には35倍近くまであったので、だいぶ割高感は解消されてきたようです。ここで「よし、チャンスだ」と考える判断も当然あるのですが、横の分析をするとどうなるでしょうか。

マネックス証券の銘柄スカウターというツールを使って、回転寿司を展開する4つの企業を比較してみましょう。くらコーポレーション、元気寿司、スシロー、かっぱ寿司の4社です(下図)。

図の「予想PER」欄をご覧いただくと、くらコーポレーションのPER28倍に対し元気寿司とスシローは23倍と低く(割安に)なっています。また、予想配当利回り欄を見るとくらコーポレーションは0.43%しかないのに対し、元気寿司は0.61%、スシローは1.36%とそれぞれ高く(割安に)なっています。

このように横の分析をしていくとひょっとすると「くらコーポレーションは今はあまり投資妙味がないかもしれない、スシローの方がいいかも」というような判断もありうるかもしれません。もちろんこの判断が必ずしもうまくいくとは限らないところが投資の難しいところですが、判断の根拠をより精緻なものにすることはできます。

銘柄の過去の業績を掘り下げていく“縦”の分析に加えて、競合企業などと比較する“横”の分析にも、ぜひトライしていただき投資成果につなげていただければと思います。

(文:マネックス証券 マーケット・アナリスト 益嶋裕)