はじめに
モノの所有から利用へ
消費社会が進化する中で、消費者の価値観も変容しています。「モノを買わない」理由は、「節約」や「お金を使わなくてすむ」ことに加えて、「モノを持つことがステイタスではなくなっている」こともあるでしょう。安くて良いモノや情報があふれる中で、買って「所有」するのではなく、必要な時だけ「利用」できればそれでいい、と考える消費者が増えているのではないでしょうか。
現在ほど商品やサービスが成熟していなかったバブル期では、良いモノ=高いモノという価値観のモノサシがありました。しかし、現在では、良いモノが必ずしも高いわけではありません。
ファストファッションで、安くてもそこそこ品質の良いモノもありますし、最先端の流行も楽しめてしまいます。良いモノ=高いモノという、かつてのモノサシは昔ほど絶対的なものではなく、モノサシは多様化しています。
地球規模の環境問題に加えて、特に日本では深刻な災害が相次ぐ中で、社会のことを考えて無駄な消費をなくす、あるいは、何か買うのであれば、被災地の復興支援になるなど何らかの貢献ができるようなモノを選ぶという行動も生まれました。
大量のモノがあふれる消費社会では、むしろ、無駄な消費をしないことが格好良いという風潮、ミニマリストへのあこがれなども見られます。
さらに、スマホやSNSが爆発的に広がり、個人と個人がつながりやすくなる中で、シェアリング・サービスが急成長しています。フリマアプリで個人間の中古品売買も簡単にできるようになりました。良質な中古品市場が広がる中で、一時期しか使わないモノは新品でなくてもいい、使わないモノはすぐ売ればいい、売る時のことを考えて買う、という考え方が若者を中心に広がっているようです。
勢いを増すシェアリング・サービス
モノの所有から利用へという流れは今後も加速するでしょう。内閣府は2018年7月に初めてシェアリング市場の推計結果を公表しました。
その推計によれば、日本のシェアリング市場は、2016年で55,000億円前後、このうち6割はフリマアプリなどを介したモノのシェアで約3,000億円、次いで3割を占めるのは民泊などのスペースのシェアで1,400億~1,800億円程度、このほか家事代行などのスキルのシェアが150~250億円程度となっています(図1)。
(資料)内閣府「『シェアリング・エコノミー等新分析の経済活動の観測に関する調査研究』報告書(2018年7月)より作成」