はじめに
不安定な相場で勝つための投資戦略とは?
――2019年は、どんな投信が注目や人気を集めるでしょうか。
つみたてNISAのスタートで激化したインデックス投信の低コスト競争は、2018年で一巡しました。つみたてNISAの対象商品が着実に残高を伸ばす一方で、高齢者層からは2018年に注目された元本確保型商品が引き続き支持を集める流れが継続するでしょう。
2019年は株式市場の不安定な値動きが継続するとの見方が濃厚です。こうした環境下では、価格変動が大きくなった局面でリスクを抑える「リスク軽減型」あるいは「リスク抑制型」と呼ばれるタイプのバランスファンド(株と債券など値動きの異なる資産を組み合わせて運用する投信)が注目を集めそうです。
代表的なリスク軽減型の仕組みを2通りご紹介しましょう。相関が低い(反対の値動きになりやすい)資産を組み合わせて機動的に配分を変えていく方法と、ヘッジファンドやオルタナティブといった相場環境に左右されにくい資産を組み入れる方法です。
近年残高を大きく伸ばしている「投資のソムリエ」(アセットマネジメントOne)は前者のパターンで、海外の運用会社の商品は後者が多くなっています。
――世界の金融市場が不安定な中で、個人投資家はどのような戦略で投資をしていけばよいでしょうか。
その人の投資スタンス次第です。相場変動に立ち向かい、安いところで仕込みたいという人なら、下落しきったタイミングでインデックス投信を買って持ち続けるという方法がシンプルです。
逆に不安定な相場が怖いと感じるなら、前述したリスク軽減型投信を活用するのもいいでしょう。投資資産の半分あるいは何割かをこうした商品に預け替えて変動を抑えたうえで、残りはコツコツ積み立て投資に回せば、結果として安いところも拾えます。
退職金やまとまった資金があるなら、全額を一度に投じずに余力を残しましょう。半分あるいは7割程度の資金でリスク軽減型投信を買って、残りは相場がさらに下落した時に追加で買えるよう現金で取っておくのです。
中には、下落の不安があるとまったく投資できない人がいますが、それでは時間を無駄にしてしまいます。良くない相場では分散投資することで成果はある程度安定させられますし、相場が好転すればそれこそ利益を取り損ねてしまいます。
不安定なうちはリスク軽減型を活用し、相場環境が良くなればインデックス投信に乗り換えるという方法もスマートかもしれません。
運用力の高い投信はどんな投信か
――個別株などにも投資する人は、どのように使い分けるといいでしょうか。
アクティブに個別株を売買する投資家であれば、そちらで手一杯でしょう。それでも、日本株だけに資産を集中するのはリスクが高いので、海外の株式や債券などには投資信託を活用したり、積み立てを併用すれば、手間をかけずに分散投資ができます。
逆に、個別株は株主優待や配当狙いの長期保有が中心であれば、投信を使って機動的な投資にチャレンジしてみてはどうでしょうか。2018年に人気のあったAI、ロボティクス、バイオ関連、あるいはFANGなど米国のITプラットフォーム企業に分散投資する商品もいいでしょう。
また、IT関連の値動きが悪いときには、バイオ・医薬系が堅調になる傾向があるので、合わせて保有するのも分散効果が効く賢い方法です。人口が増える新興国なら、内需関連を狙うのがシンプルで効率的だと思います。
――たくさんある投信の中で、良い商品を選別するポイントを教えてください。
日本には約6,500本の投信がありますが、その中で個別株のような「お宝銘柄」や「テンバガー(10倍銘柄)」を探そうとは思わないことです。自分に合った投信を見つけるには、まずどういう目的で、何に投資したいかを明確にしたうえで、その条件をスクリーニングで絞り込んでいきます。
ある程度絞り込めたら、値動きをチェックしましょう。アベノミクス相場以降に設定された投信は良い相場しか経験していないので、運用の巧拙にかかわらず、これまで一様に良い成績を上げてきました。これらの投信は、2018年後半になって初めて下げ相場に直面しています。
本当の運用力は下落相場や乱高下相場でこそわかるので、この時期の値動きは各投信の運用力を判断するうえで、とても参考になります。ほとんどの商品の基準価額が下落するのは当然としても、運用力の高い商品は類似の商品と比べて下落幅が小さかったり、変動そのものが小さく抑えられています。
篠田さんは当該ファンドの基準価額のパフォーマンスを分類平均と比べてみることを推奨
楽天証券のサイトやモーニングスターなどでは、同じ分類の投信と値動きを比較できる機能があるので、ぜひ活用してみてください。
投信は上昇相場に乗るよりも、下落相場で踏みとどまるほうがずっと難しいものです。2018年後半の不安定な局面で持ちこたえられた投信なら、反発局面でもちゃんとついていけることが期待できます。
2019年はこれまで下駄を履かされてきた投信の運用力がはっきりと「見える化」され、選びやすくなるのではないでしょうか。