主要な金融商品の2019年相場について専門家に聞く短期集中連載。3回目は、投資のプロに運用をお任せできる「投資信託」です。

つみたてNISAのスタートとともに幕開けした2018年でしたが、年後半は世界的な株安に巻き込まれ対象商品の多くで運用成績が悪化しています。不透明な相場環境での活用方法や新しい年の投資信託のトレンドについて、楽天証券経済研究所・ファンドアナリストの篠田尚子さんに聞きました。


販売チャネル拡大で投資家層に広がり

――2018年はつみたてNISAがスタートし、始めて投資信託を買ったという人も多かったと思います。投資信託(投信、ファンド)にはどんなトピックがあったでしょうか。

篠田さん(以下同): かつては投資信託への投資といえば証券会社か銀行との取引がほとんどでしたが、2018年はさまざまなチャネルから投信を始める人が増えた1年だったように思います。つみたてNISAはもちろん、2017年に対象を拡大したiDeCo(個人型確定拠出年金)も、継続して新しい層を呼び込んでいます。

また、フィンテックベンチャーやネット証券が提供する「ロボアドバイザー投資」や、買い物のおつり相当額を投資に回す「おつり投資」なども残高を増やし、買い物やクレジットカード利用などで貯まったポイントで投信を買える「ポイント投資」も人気を集めました。

――投資家層が拡大しているということになりますか。

その通りです。個人投資家が高齢者中心だった頃は毎月分配型投信に人気が集中していましたが、投資家層の幅が広がることで、商品ニーズも多様化しています。

たとえば、コストに敏感な層からは低コストのインデックス投信(特定の指数に連動する運用を目指した投信)が根強い支持を集めていますが、2018年はより細分化・テーマ化したインデックスに連動する商品が数多く登場しました。

三菱UFJ国際投信が宇宙開発、ロボット、遺伝子工学などの分野に特化した指数に連動する「eMaxisNeo」というシリーズを新規設定したほか、大和証券投資信託委託もNASDAQバイオテクノロジー指数などに連動する「iFreeNext」という新シリーズを発売しています。

一方で、守りのニーズが強い高齢者には、国内初の元本確保型商品である「ゴールドマン・サックス社債/国際分散投資戦略ファンド」(アセットマネジメントOne)が人気を集めました。その名の通り、ゴールドマン・サックスの社債に投資する仕組みで、10年後の償還まで保有すれば同社が倒産しない限りは元本割れしない商品です。

機動的に投資をしたい層には、AI(人工知能)やEV(電気自動車)、米国のFANG(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルの大型ハイテク銘柄群)のほか、バイオ関連企業などに投資するテーマ型投信が人気を集めました。こうした時代の波に乗るテーマ型投資は個別株の選別が難しいので、投信を活用する価値は高いでしょう。

2019年は含み損が拡大する場面も

――投資信託のバラエティも広がっているのですね。

投資家と金融機関との付き合い方が多様化していることも影響しています。洋服を買う時をイメージすると、わかりやすいかもしれません。昔ならデパートで見立ててもらうのがベストな購入方法とされていましたが、今はネット通販やフリマアプリなどさまざまなチャネルを活用して自分で選択する人が増えています。

自宅にいながら安くて良いものが買える一方で、届いたものを着てみると似合わない、サイズやイメージが合わないといった失敗も生じやすくなります。そこで、手軽さはそのままに、失敗を少なくしたい人には、定額で洋服をレンタルするサブスクリプションサービスを活用する方法もあります。

投信も同じで、証券会社の担当者とコミュニケーションする投資家の割合は減少し、ネット証券などで自ら選んで投資する層が拡大しています。それが難しい人や、大きな失敗をしたくない人は、ラップ口座やロボアドバイザーなど、対面とは別の形でのおまかせ投資をする選択肢も広がってきました。

――2018年にスタートしたつみたてNISAに対する個人投資家の反応はどうでしょうか。

楽天証券の状況を見る限り、予想していた以上に反響が大きいです。制度を利用して実際に積み立てを始める新規の投資家が多く、着実に投資のすそ野が広がっていると感じます。

政府が後押ししていることと、スタート時の相場環境が良かったことが、安心感にもつながったようです。対面系証券や銀行では状況が異なるのかもしれませんが、若年層が中心のネット系金融機関は、どこも手応えを感じているのではないでしょうか。

ただ、2018年後半は国内外の株式市場が波乱に見舞われたことから、つみたてNISAの口座の多くは損失を出してしまっています。しかし、積み立て投資を成功させるには、相場が良い時も悪い時も淡々と継続することが重要です。

2019年はさらに含み損が拡大する局面があるかもしれませんが、こうした時でも安値をコツコツ拾っていけるのは積み立て投資のメリットでもあります。初めて含み損に直面する投資家でも、くじけることなく積み立てを続けられるよう、金融機関にも投資家をサポートする姿勢が求められ、投資家と金融機関双方が正念場を迎えているといえるでしょう。