「君子は豹変す」、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長のことです。今年に入りFRBの姿勢がハト派にシフトしたのは明らかで、ドル円相場の環境は昨年とは明確に変化したと言えます。

また、以前から市場の一部では購買力平価に比べて円の水準は割安という声も聞かれています。今後は円高リスクが高まると考えるべきでしょうか。


FRBの姿勢変更が市場にもたらす影響

米連邦準備制度理事会(FRB)は、昨年10月初めの段階では中立金利まで長い道のりがあるという認識を示していましたが、今年1月初めには利上げ休止の可能性に言及しました。続く1月29、30日の連邦公開市場委員会(FOMC)では現状維持が決定されましたが、市場ではFRBが想定以上にハト派にシフトしたという声が多く聞かれます。

確かに、声明文において今後の方針を示す文言“一段の漸進的な利上げ”が丸ごと削除されたこと、さらには別紙で保有資産縮小の柔軟化を示唆したことはFRBの変心をかなり印象づけたと言えそうです。少なくとも次回3月の会合で利上げが見送られるのは確実な状況であり、場合によってはこのまま利上げサイクルが終了する可能性も否定できません。

当然ながら、市場においても金利先高観はほぼ消滅し、米国債利回りは低位で安定しています。通常、日米金利差の縮小は円高ドル安要因であり、前述のFOMC後、現に円買いが進む場面が見られました。

しかしながら、その後は日米金利差とは関係なくドルが堅調で、市場のムードからは円高警戒感がほとんど感じられません。この背景はリスクセンチメントの改善であり、米中貿易協議に対する楽観ムードが広がる中、日経平均株価もようやく一時2万1,000円の大台を回復するなど、いわゆるリスクオンの流れに乗って円売りが進んだと言えます。

持続的な円安基調にとって必要な条件とは

昨年の同時期を振り返ると、日米金利差の拡大に逆行する形で円高ドル安が進行しました(下図)。

こうしたケースがあることに鑑み、ドル円相場の値動きは必ずしも金利に左右されないことは明らかです。とは言え、もう少し長い期間で見れば、両者の連動性が高いことは認めざるを得ません。

日米金利差が拡大すれば必ず円安に振れるとは言い切れず、その意味で“十分条件”ではない反面、持続的な円安ドル高トレンド実現のうえで日米金利差拡大は欠かせない要素であり、換言すれば“必要条件”という位置づけになるでしょう。

リスクオン環境の下で日米金利差拡大というピースが加われば、円安ドル高が進みやすいことは言うまでもありませんが、こうした条件が整うのはもう少し先になりそうです。

米国の金利先高観を欠いた中でのドルの戻りには限界があるとみられ、持続性は疑わしいと言わざるを得ません。今後1~2ヵ月は1ドル=110円を挟んだレンジでドルの値固めという展開が想定されます。

一方、リスクシナリオは米国の利下げ観測の高まりです。政府閉鎖の影響で一部の経済指標の公表が遅延していますが、その間に米国経済の減速が想定以上に進んでいる可能性は払拭できません。この冬は寒波の影響で経済活動にも一部支障が出ている模様であり、やや警戒を要するでしょう。