はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、年金暮らしの65歳の女性。これから先、夫が亡くなった場合も想定して分譲マンションを売却し、賃貸に住み替えることを検討しています。老後の住まいについて、何を優先して考えていけばいいのでしょうか。FPの渡邊裕介氏がお答えします。
現在、家族3人と犬でマンションに住んでいますが、万が一、夫が亡くなり、犬が亡くなった場合、賃貸もしくは住み替えをした方がいいのか悩んでいます。娘には、そろそろ一人で暮らしをしてもらおうと思っています。現在のマンションは7年前に3600万円で購入しましたが、人気のエリアのため現状4000万円くらいに値上がりしているようです。一人で住むには3LDKは大きいし、これから管理費も上がってくると思うので、いっそのこと賃貸に住み替えた方がいいのかなと。老後の住まいは、どのように考えていくべきかアドバイスいただければ幸いです。
<相談者プロフィール>
・女性、65歳、既婚(夫:67歳、無職)、子供1人(38歳・未婚)
・職業:無職
・居住形態:持ち家(マンション)
・手取り月収:25万円(夫婦合わせた年金)
・毎月の支出目安:25万円
・預貯金:2000万円
・負債(住宅ローン):なし
渡邊: こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。老後の住まいについては、色々と悩みはあるものの、何から考えれば良いのか難しいですよね。ポイントを整理しながら、ひとつずつ考えていきましょう。
夫に先立たれた後、生活は成り立つ?
ご主人様に万が一のことがあった場合とのことですので、まずは、その場合に受け取れる年金についてみていきます。前提として、ご主人様は厚生年金、奥様は国民年金のみとします。現在、ご夫婦お二人合わせて月25万円、年額で300万円の年金収入とのことですので、内訳としては以下のように仮定します。
夫: 「老齢厚生年金」約144万円/年、「老齢基礎年金」約78万円/年
妻: 「老齢基礎年金」約78万円/年
65歳以上の妻が、夫が亡くなった場合に受給する年金は、遺族厚生年金とご自身の老齢基礎年金、それに経過的寡婦加算(昭和31年4月1日以前に生まれの方)が加わります。遺族厚生年金は老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4となりますので、奥様が受給する年金は、概算で年間192万円、月額で16万円となります。
一方で、総務省の「2018年度家計調査報告」によりますと、65歳以上の女性単身世帯における平均消費支出は月額15万1421円となっていますので、受給年金額とほぼ同額となりますね。健康であれば、仮に夫に先立たれたとしても、年金の範囲で生活は成り立ちそうです。