はじめに

「繰下げ受給」で10年以上先の家計に備える

親が65歳以降も働く場合やある程度の貯蓄がある場合には、繰下げ受給の利用を検討してみると良いでしょう。年金の「受給期間」は短くなりますが、受給開始から約11年11カ月経過すると、「受給総額」は65歳から受給開始した場合に比べて多くなります。

たとえば、68歳まで繰り下げると80歳直前、70歳まで繰り下げると82歳直前で追い越すわけです。

表2.繰下げ受給の増額率の例

支給開始年齢 繰り下げ期間 増額率 受給総額が65歳受給者(本来請求)に追いつく年齢
本来請求 0年(0カ月) 0%
66歳 1年(12カ月) 8.4% 約77歳11カ月
67歳 2年(24カ月) 16.8% 約78歳11カ月
68歳 3年(36カ月) 25.2% 約79歳11カ月
69歳 4年(48カ月) 33.6% 約80歳11カ月
70歳 5年(60カ月) 42% 約81歳11カ月

※昭和16年4月2日以後生まれの場合
※資料:日本年金機構ホームページをもとに執筆者作成

ここでも先ほど紹介した平均余命をもとに考えると、男女ともに繰り下げ受給をしたほうが受給総額は多くなると期待できることが分かります。

使うと減る貯金と違って、一生涯もらえる年金は長生きすればするほどお得になり、90歳や100歳など、想定していた以上に長生きした場合に備えることができます。

ただし、繰下げ受給をすると「加給年金が支給されない」「税金や医療費などの負担が増えることがある」など、繰下げ受給に向いていない人もいます。繰下げ受給をしたほうが良いかどうかは、親の状況をよく確認し、慎重に判断をする必要があります。

仲良くお金の話ができる親子関係を目指そう

親の年金について情報共有することができたら、保有している資産や負債の内容、現在の支出状況なども確認していけると理想的です。

親の家計状況によっては、過度な生前贈与を断ったり、早い時期から同居を始めたりなど、子供側の行動によって親の家計を助けることができます。

もちろん、親の支出を抑える方法を一緒に考えていくことも有効です。ただ、親にも大切にしている想いや考えがあるでしょう。そのため、子供から一方的に意見を押しつけることは避け、親の意見や希望を聞くことが大切です。

どんな老後を過ごしたいと思っているのか、そのためにどのような準備をしているのか、子供である自分にどのようなことを期待しているのか、こんな役立つ情報があるのは知っているか、など。

あくまでも無理のないペースで良いので、家計について話ができる親子関係を築いていくことが、親子共倒れとなる老後を防ぐ大きな一歩となるでしょう。

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