はじめに
地元の食の名店が集結
パルコが「やるべきと決めたこと」。それは「日本初」や「東京初」といった初物にはこだわらず、墨田の名店を集めたテナント構成でした。
その考えが顕著に表れているのが、1階にある「すみだフードホール」です。フードコートとマルシェとレストランを融合させた形式の中に、墨田区を代表する食の名店を集めました。
たとえば、「すみだモダン」として区から認定を受けている「SUMIDA COFFEE」は、江戸切子のグラスでアイスコーヒーを提供するので知られる店舗。パルコでは江戸切子での提供はありませんが、ランプシェードに江戸切子を使うなど、本店をイメージさせる工夫が施されています。
その隣りは、真鯛ラーメンを看板商品に、ラーメンマニアによる人気投票で全国1位に輝いた「麺魚」が入居します。ほかにも、角打ちスペースを併設した「IMADEYA SUMIDA」など、地元に縁のある飲食店が軒を連ねています。
「麺魚」の真鯛ラーメン
また、6階には、錦糸町で50年間商売を続けてきたレジェンドが運営するという「ジーランドエクストリーム」が出店。名実ともに錦糸町の顔となる店舗をそろえました。
靴下編み機のある無印良品とは?
一方で、近隣のマーケット特性を踏まえて、ファミリー客やカップル客向けの仕掛けも数多く散りばめています。
4階では、無印良品が1フロアを借り切り、都内最大級の店舗をオープン。窓に面した開放的な空間には、カフェと子供用の木育広場を設置しました。また、無印良品としては初めての試みとなる靴下編み機を導入。自分でデザインした靴下を作成することができます。
靴下編み機では好みの靴下を作成可能
7階には、パルコとしては初めてとなるクリニックモールを配置。近隣に住むファミリーはもちろん、パルコ内の店舗で働く女性にも使ってもらうことを狙っています。
一方で、美容やコスメの店舗は1つのフロアに固めるのではなく、1~7階にランダムに構成。宝探しの感覚で、ファミリーやカップル、女性客同士の買い回りの楽しさ、ワクワク感を醸成させたい考えです。
錦糸町パルコ全体で目指すのは「1日いても楽しいような仕掛けをどうやってセッティングできるか」(牧山社長)。商業施設とテーマパークの中間的な位置づけの施設として、幅広い客層がゆったりと会話をしながら楽しめる空間づくりを進めます。
パルコヤのノウハウを横展開
こうした店づくりの背景にあるのが、2017年に上野御徒町に開業した「パルコヤ」でのノウハウです。44年ぶりに東京23区内に出店したこの新屋号には、「うえの やぶそば」をはじめとした地元の名店が新業態で出店。パルコらしい斬新さと地元の特性とをうまく組み合わせました。
「その街の今と、半歩先に何が期待されているか、に合わせて、業態を変える力がわれわれの強み」と牧山社長は語ります。そのうえで、錦糸町の今後のポイントとして「出店したテナントの熱意と、それに応えられるオペレーションをパルコがどうしていくか」と説明します。
錦糸町パルコの年商目標は115億円。全国17店舗中9番目で、札幌(年商134億円、2017年度)と習志野(同106億円)の間に位置するポジションです。
年間の来場者数はビル全体で1,000万人が目標。東京東部初進出だった上野の経験を、同じく東京東部に位置する錦糸町で生かすことができるか。激戦エリアでの成否は、その巧拙がカギを握りそうです。