はじめに
毎年恒例となっている、リクルート住まいカンパニーがまとめた「SUUMO住みたい街ランキング」。その関西地区の最新版が3月13日に公表されました。
関西といえば、人の出入りが少なく、街の再評価がされにくい土地柄。首都圏に比べると街のブランドも固定化されやすい傾向が顕著、というイメージがありました。
しかし、今年のランキングからは関西でじわりと進みつつある、住みたい街の“地殻変動”の兆しが見え隠れします。いったい、どんな変化が起きつつあるのでしょうか。
高槻、茨木、千里中央が軒並み苦戦
関西の住みたい街といえば、首都圏における東急東横線や東急田園都市線と似たように、阪急神戸線に代表される「阪神エリア」と阪急京都線などが走る「北摂エリア」が定番のイメージでした。
しかし、最新ランキングでは、このうちの後者、北摂エリアの代表的な街が軒並み苦戦しています。
(出所)リクルート住まいカンパニー
たとえば、大阪を代表するベッドタウンの1つで、関ジャニ∞の村上信五さんの出身地としても有名な高槻市は、最新順位が22位。2017年の13位から2018年には22位にランクダウンし、今年は横ばいで推移しました。
高槻市の隣町である茨木市も、今年は34位。2017年の16位、2018年の19位から、年々順位を落としている格好です。
また、地下鉄御堂筋線に直結している北大阪急行の始発駅である千里中央は、2017年には4位、2018年には5位とトップ5に位置していましたが、今年は10位まで低下。駅周辺の再開発が一段落したことに加え、北大阪急行の延伸が決まり、始発駅でなくなることなどが足を引っ張ったとみられます。
梅田一極集中で北摂は逆回転?
人気エリアだった北摂の地盤沈下の背景にあると考えらえるのが、大阪市内でのマンション供給の増加です。大阪取引所のある北浜や西区、中央区などでタワーマンション開発が活発化。一大ターミナルである梅田駅の徒歩圏にもマンションができ、職住近接の動きが盛んになっています。
東京では各所で進んでいる再開発ですが、大阪ではいわゆるビルの建て替えがほとんど。再開発らしい再開発は梅田北ヤードぐらいで、結果として梅田一極集中が大きく進展。オフィスに加えて大型商業施設も新設され、昼間就業人口が伸びています。それでいて、首都圏ほど物件価格の高騰が進んでおらず、大企業のサラリーマンであれば手の届く価格です。
こうした状況を反映して、住みたい街の最新ランキングでも地下鉄御堂筋線の梅田は2位をキープ。別駅としてカウントされているJR東海道本線の大阪を足し合わせると、得点は1,219点と西宮北口(阪急神戸線)を抜いてトップに躍り出ます。
逆の見方をすると、これまで北摂に住みたいと思っていた層が大阪市内に関心を抱くようになり、あえて北摂に住もうという選択肢がなくなったといえます。SUUMOの笠松美香・副編集長は「以前は専業主婦世帯が北摂に家を買っていましたが、今はパワーカップルのDINKsが大阪市内でタワマンを購入しています」と解説します。
不動産専門のデータ会社である東京カンテイの井出武・上席主任研究員は「もともと北摂には、芦屋や西宮ほどのブランド力はありませんでした。千里ニュータウンも、どちらかといえば庶民的な団地のイメージ。梅田一極集中の影響をモロに受けた形」と指摘します。