はじめに

学習指導要領の改訂で教育費は増加傾向に?

特に、子どもの年齢が幼い家庭については、2020年度から導入される大学入試共通テストと新学習指導要領の施行にも注意が必要です。

新しい学習指導要領では、2020年度から原則として全ての小学校で英語教科やプログラミングが導入されることになります。

大学入試共通テストについては、一部で記述式の回答も導入されるほか、英語については書く、話すスキルについても重視されるようになりました。さらに、昨年半ばに開催された「未来投資会議」では、2024年度以降の大学入試共通テストで、「情報I」というプログラミング関連科目が出題される可能性があることも明らかとなっています。

教育業界についても、このような流れを受けて講義の再編が進んでいます。学研ホールディングスや、明光義塾を運営する明光ネット、早稲田アカデミーをはじめとした有名企業が、教育分野における改革とその対応について力を入れています。

各社は「決算短信」とよばれる、会社の経営状況を説明する資料の中で、2020年度の教育改革を念頭に置きつつ、教育の付加価値を高める施策について言及しています。

具体的には「電子機器を用いた講義の設計」や「集団授業から個別指導へのシフト」といった内容になります。使用する教材の質が向上したり、生徒一人当たりの講師数が増えたりすることで、私たちの費用負担が重くなる可能性があります。

プログラミングや英語教科といった量的な増加だけでなく、教育サービスの高付加価値化も相まって、将来的には今の統計データで確認できない教育費の積み増しが余儀なくされる可能性があります。このような過渡期においては、早期から余裕のある教育費の準備を行うことが不可欠となるでしょう。

中学生以上の子どもがいる場合は、学習塾の1教科分程度の月謝を毎月の教育費に上乗せする程度を見込み、より詳細な計画についてはデータが充実するにつれて、定期的に見直していくと良いでしょう。

制度の活用や資産運用による対策も必要に

日本政策金融公庫の「教育費に関する調査結果」によれば、70.6%もの世帯が何らかの方法によって教育費を捻出しています。複数回答可能なアンケートの中で、最も多い方法は節約(31.7%)でした。これに続くのが、預金の取り崩し(23.3%)や奨学金の利用(21.0%)です。

教育費の負担が増加していくと、出費や借入れに着目した資金の捻出方法にも限界が見えてきます。出費以外の側面でも早期から対策を講じておくことが望ましいでしょう。

時には世代間の助け合いも必要となるかもしれません。例えば、一定の条件を満たせば、子どもの祖父母等から子どもに贈与する額のうち、最大1,500万円に相当する部分の贈与税が非課税となる「教育資金贈与信託」という仕組みもあります。

「教育費に関する調査結果」では、教育費の捻出方法として「親族の援助」が7.6%含まれていましたが、「教育資金贈与信託」の利用割合は1.0%にとどまっています。この仕組みは教育資金の捻出だけでなく、相続税対策にも有効であるため、税理士などの専門家にも相談しながら利用の検討をしてみてはいかがでしょうか。

さらに、余裕資金のうち一部を投資信託や債券等で運用していくことも検討しておくべきでしょう。定期預金の利息で教育費を補うことが難しくなってしまった現代では、子供のための教育費を「貯める」だけでなく資産運用によって「殖やす」という観点も重要となってくるでしょう。

そもそも教育費は国の政策による影響も大きく、毎年見直しが入る可能性があります。最も大切なことは、今年から教育費がどのように変化していくかを確認することです。将来の変動を予測して教育費の計画を練るという姿勢作りによって、早期から子どもの教育に必要な金額を準備するための策を講じやすくなるでしょう。

<文:Finatextグループ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 古田拓也>

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