はじめに
以前の連載記事において、筆者がお会いした長期的に投資で成功している方の特徴をご紹介しました。その中でポイントの2つ目に挙げたのが「常に学ぶ」ことでした。
本当に、私がお会いした成功者の皆さんは例外なく、継続的な学びを続けていらっしゃいます。そういった姿勢に触れると、私自身ももっと勉強せねばという思いを強くします。
株式投資の世界は、どれだけ勉強してもそれが必ずしも成果に結びつくわけではありません。ものすごく時間をかけて精緻な分析を行って投資した銘柄の株価が下落することもあれば、逆にまったく勉強せずに選んだ銘柄がたまたま運良く大幅に上昇することもあるでしょう。
株式投資がギャンブルに近いと思われている理由の1つはこういったところにもあるのかもしれません。それでも私は株式投資で成功するためには継続的な学びを続けることが必須であると強く信じています。
運頼みの投資は長続きしません。逆に不運に見舞われることも当然あります。継続的な学びを続けていてこそ、不運に見舞われた際のダメージを小さくし、幸運が舞い降りたときのリターンを増やすことができると思います。
投資で持つべき思考法を学ぶ
学びにも、実際の投資で学ぶこと、信頼できる投資家から話を聞くことなど、いろいろありますが、最も手軽に学べるのは「良い書籍を読む」ことだと思います。本日のコラムでは私自身が読み、自信を持って個人投資家の皆様におすすめできる書籍を3つご紹介します。
書籍1:ハワード・マークス著『投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識』(日本経済出版社)
最初におすすめしたいのが『投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識』です。米国で出版された書籍の翻訳本で少し読みにくさを感じる方もいるかもしれませんが、すべての個人投資家に一読してもらいたい名著です。
著者のハワード・マークス氏が本書で繰り返し述べているのが「投資は簡単ではない」ということ。マーケットの参加者は1円でも儲けたいと考えている人ばかりです。そんな厳しい環境下でマーケットに勝つ成績を収めるのは、並大抵のことではありません。それをマークス氏は鋭く指摘しています。
また、マークス氏がすすめるのが「企業の本質的価値」に基づいた投資を行うことです。企業の業績や資産などの本質的価値を推計し、それを基に投資を行うべきだと主張しています。
私もこの主張にまったく同意します。どちらかというと投資の具体的な実践法というよりは、投資を行ううえで持っておいたほうが良い思考法に重きが置かれた本ですが、すでに投資を行っている方、またこれから投資を始める方にはぜひ読んでいただければと思います。
『四季報』の実践的な活用法を学ぶ
書籍2:足立武志著『株を買うなら最低限知っておきたいファンダメンタル投資の教科書』(ダイヤモンド社)
続いておすすめしたいのが『株を買うなら最低限知っておきたいファンダメンタル投資の教科書』。筆者の足立氏は現役の公認会計士兼投資家であり、企業の財務分析のスペシャリストです。私が所属するマネックス証券のセミナーに何度も出演していただいており、とてもわかりやすいお話でお客様から非常に好評でした。
本書では『会社四季報』や決算短信、有価証券報告書などの見方が基礎からわかりやすく解説されているだけでなく、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった投資指標の意味や実践的な活用方法も紹介されています。
本書で特にわかりやすいのが、会社四季報を投資に活かす実践的な方法が述べられていることです。企業の長期的な業績トレンドや自己資本比率、営業キャッシュフローなど、投資家が見るべきポイントが簡潔にまとめられています。この本を読んで投資を実践いただければ、投資で大失敗する可能性が非常に低くなるのではないかと思います。
簿記知識なしで会計の本質を学ぶ
書籍3:國貞克則著『決算書がスラスラわかる財務3表一体理解法』(朝日新聞出版)
最後は直接株式投資の本ではありませんが、企業会計への理解が深まる良書をご紹介します。『決算書がスラスラわかる財務3表一体理解法』です。
「財務3表」と呼ばれる損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を一体的に理解することで、3表のつながりが見えてくる会計の入門書になっています。
会計を学ぼうとすると「簿記」が頭に浮かびがちですが、この書籍を読むうえで簿記の知識は一切必要ありません。筆者の國貞氏が独自に編み出した「財務3表一体理解法」に基づき、非常にわかりやすく会計の説明がなされていきます。
たとえば「損益計算書の純利益は貸借対照表のこことつながっていたのかー!」など、読めば目から鱗が落ちるポイントがたくさんあると思います。
今回ご紹介した書籍のほかにもまだまだおすすめ書籍はたくさんありますが、中でも特におすすめの3つの書籍をご紹介しました。ぜひお読みいただき、投資成績向上につなげていただければと思います。
<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>