はじめに
なぜリスクオン全開になったのか
このリスクオン全開の背景は何なのでしょうか。リスク資産にお金が集まるということは、シンプルに考えて不安材料がなくなったということでしょう。それを端的に表すのが「恐怖指数」の別名をもつVIX指数。過去半年で最低のレベルに下がりました。
これまで市場を覆っていた不安が後退しています。最大の不安材料は世界景気の減速でした。一時は、景気後退にまで至るリスクが盛んに言われていましたが、現状は少なくともすぐに景気後退になるような状況からは程遠いといえます。
一番心配されていた中国は、購買担当者景気指数(PMI)が国家版、財新版ともに好不況の境目である50を超える急回復をみせました。ほかにも輸出、融資額、資金調達額、マネーサプライ、鉱工業生産など、多くの経済指標で改善が目立ってきました。政府の景気対策の効果が現れてきたといえるでしょう。
こうしたことを受けて、4月17日に発表された中国の1~3月実質GDP(国内総生産)は前年同期比6.4%増となり、市場の予想を上回りました。伸び率は2018年10~12月期と同じでした。
中国の景気は1~2月はかなり悪化していましたので、1~3月の統計が昨年10~12月から横ばいだったということは、3月で相当持ち直した可能性があります。いずれにせよ、中国景気は順調に回復しているようです。
今年も「外国人の4月買い」は継続?
米国では、3月の雇用統計で非農業部門の雇用者数が大幅増となりました。新規失業保険申請件数も50年ぶりの低水準となりました。労働市場は完全雇用に近く、賃金は年3%程度の緩やかな上昇を見せています。良好な労働市場が経済の根底にある以上、多少製造業関連の指標が悪化しても、底堅い個人消費が米国景気を支えるでしょう。
国際通貨基金(IMF)は4月9日公表の最新の世界経済見通し(WEO)で、2019年の成長率予測を3.3%と、10年前の金融危機以来の低水準に引き下げました。ただ、景気後退入りのリスクは小さいとし、今年後半には成長は上向き、2020年には成長率が約3.6%に回復する見通しを示しました。年後半からの景気回復というIMFが示した見通しは、世界のコンセンサスといってよいでしょう。
金融政策も緩和的になっています。景気対策を打っている中国は、銀行に貸し出し目標まで設置して資金を供給しています。米国は利上げを停止、バランスシートの縮小も終了します。欧州でも、ECB(欧州中央銀行)は中長期融資の再開を表明しています。日本銀行の緩和にも変化はありません。
そして政治面でも、英国のEU(欧州連合)離脱期限は秋まで延期されました。米中の貿易交渉も最終合意へ近づいているとみられます。
よく知られたアノマリー(理論的根拠はないが、よく当たる相場での経験則)として、4月には外国人が日本株を大幅に買い越すという季節性があります。外国人の売買動向はずっと売り越しが続き、「4月の買い」も今年は不発かとの懸念もありましたが、4月の第1週は買い越しに転じました。「遅ればせながら」ではありますが、日本株相場もようやく潮目が変わってきそうです。
<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>