はじめに
イメージ図に当てはめると現状は?
本来はトレンドを伴ったもう少し長い動きに適応すべき概念だと思われますが、米国の2017年初頭からの懸念ベースの動きを含む市場の変動に当てはめてみましょう。
2017年は、好調な景況感と企業業績を背景に、株価が上昇しました。この局面は業績相場に当てはめることができそうです、
次に、2018年4~6月期の米実質成長率が4%(前期比年率)を上回るなど景気が底堅さを保つ中で2018年2~3月に発生した下落は、累積的な政策金利引き上げがいよいよ景気に悪影響を与え始めることへの懸念によるものと私は考えています。したがって、この下落を上図に当てはめれば逆金融相場に分類することができそうです。
そして、2018年12月の下落は、米長短金利の逆転による景気後退懸念がきっかけの1つになりました。したがって、この局面は逆業績相場と理解することもできそうです。
最後に、2019年に入ってからの上昇は、パウエル議長が利上げに対して慎重スタンスを示唆したことがきっかけの1つであるため、まだ利下げは実施されてはいませんが、金融相場と考えることができそうです。
そして、足元の株価上昇が中国や米国の堅調な経済指標をきっかけの1つとするものであれば、再度、業績相場入りしたという見方ができるかもしれません。
今後の留意点はどこか
ただし、どの局面でもこのように簡単な概念図に当てはめることができるほど、実際の経済や市場の動きは単純ではありません。逆回りすることや、そもそもこの概念図で説明できないような動きに見舞われることもあります。
米国では、過去と比較して低い政策金利水準を維持すること自体が緩和的効果を生むという見方もあります。しかし、パウエル議長が率いるFRBが再度政策金利の引き上げに向かうには、堅調な経済指標データの積み上げに加えて、丁寧な説明を要し、一定の時間が必要であると思われます。
このような状況下、大幅に増加した米小売売上高(3月)に代表されるように、仮に景況感が改善する局面が続けば、金融相場と業績相場が相まって、米株式市場は良好な投資環境が続くと判断することができそうです。
なお、中国では景気に過熱感が見られれば、すぐにでも政策が変更される可能性があること、さらには日本の景況感やこれを受けた政治的な動向(消費税率引き上げをめぐる議論を含む)などには、注意が必要と考えます。
<文:チーフ・グローバル・ストラテジスト 柏原延行>