はじめに
税制優遇を受けながら老後のための資産形成ができるiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入対象が2017年に拡大しました。これを受けて2017年2月11日(土)、「資産形成・iDeCo 1DAYスクール」と題するイベントが開催されました。
金融機関や運用会社から投資の専門家がiDeCoや老後の資産形成について語られたセミナーの中から本記事では、三菱UFJ国際投信株式会社プロダクト・マーケティング部長の吉田研一氏が語った「サラリーマンの強みを活かした資産形成」についてご紹介します。
サラリーマンが投資で成功するには?
吉田氏: いよいよ大学受験シーズン本番ですね。皆さんは学生時代、苦手科目の克服を優先するほうでしたか、それとも得意科目を伸ばそうとするタイプでしたか?
問題を解決するための人間の行動パターンは大きく2通りに分けられます。ひとつは強みを生かして問題解決をしていくパターンです。
もうひとつは、弱みを克服することで問題を解決しようとするパターンです。ある調査によると、日本人は7対3でこのタイプが多いそうなのですが、果たして本日のお題である資産運用ではどちらのタイプが成功しやすいでしょうか。
答えはズバリ、強みを生かした資産運用です。金融市場にはたくさんのプロが働いていますが、成果を上げられずに去っていく人は少なからずいます。私は20数年間、運用に携わってきましたが、ファンドマネージャーやアナリスト、エコノミストなどマーケットで働く人たちで生き残っている人のほとんどは、自分の強みを生かしている人たちです。金融の世界では、強みを生かすのが成功する人の共通点なのです。
これはなにもプロだけの話ではなく、個人投資家にも同じことがいえます。では、我々サラリーマンの強みとは何なのか、どういった強みを生かして資産形成していくべきかということを、今日はお話ししていきます。
一般的にサラリーマンが経験するライフイベントには結婚、出産、マイホームの購入、子どもの結婚出産による孫の誕生などがあります。そして最後には、死を迎えることになります。
これらのライフイベントの共通点はなんでしょうか。それはズバリ、お金が必要な点です。お金と人間の生活は切っても切れない関係にあり、悩みの種でもあります。特に老後の生活に関しては、お金の有無はより重要な要素になってきます。
金融広報中央委員会の調査によると、老後の生活について8割以上の人が「心配である」と答えています。金融資産の有無を尋ねるとまったく持ってないという世帯がなんと3割にも達しているのです。
これらのデータが何を意味しているのかというと、心配だけれど何も行動を起こしていない人が多いということです。何も私はここで政治家をしっかり選べとか、社会福祉を充実させろと言いたいわけではありません。自分の身は自分で守るしかない、不安や問題を感じるなら自分で今すぐ資産形成を始めるべきだと言いたいのです。
投資を始めるには大金が必要?
そこで金融資産を増やしていくための「道具」にどんなものがあるかというと、預金、保険、株式、投資信託などがあります。預金は銀行、保険は保険会社が扱っており、上場会社の株は証券会社で買えます。われわれ三菱UFJ国際投信は運用会社と呼ばれ、投資信託を供給している会社です。三菱UFJフィナンシャル・グループのうち、三菱東京UFJ銀行は預金を提供し、当社は運用会社として投資信託を提供しています。
私たちが提供している投資信託が、サラリーマンの資産形成ツールとして活用してもらえているのかというと、そうとはいえないのが現実です。投資信託を保有している人は、すでに現役を引退した高齢者が中心だからです。もちろん、高齢の方にも良い金融商品ではありますが、これから資産形成をしていくべき現役層にあまり活用されていないのは残念なことです。
投資をしたことのない方にこういうお話をすると、だいたい2通りのご意見が帰ってきます。ひとつは「投資って、お金や時間がすごく必要なんでしょう?」というご意見です。
確かに「投資」に関してニュースやメディアで報じられる内容はというと、企業の大型M&A投資の話が多いですね。たとえば、孫正義さん率いるソフトバンクが海外の企業を何千億円という途方もない金額で買収したなんていうニュースを見ても、自分とは関係ないと思うのは無理もありません。
一方、本屋さんに行けば、「デイトレードで1億円!」といったタイトルがついた投資本が並んでいます。日中は仕事をしていて、大きな元手資金も持たないサラリーマンには、そんな売買は真似できません。
ただ、そこで「自分には関係ない」と思考停止するのではなく、「資産形成とは何のためにするのか」をもう一度考えてみてください。個人の資産形成は大型M&Aを成功させることではないし、短期間で何億円も稼ぐことではありません。もちろん稼げればそれに越したことはありませんが、そこまでハードルを上げる必要がありません。むしろ、将来のためにお金を蓄えておくとか、老後に対する不安を解消して自立した生活を送るためであるということを再確認していただきたいのです。