はじめに
あなたは転職を考えたことはありますか?
総務省の労働量調査によると、10代~30代を中心に毎年約20人に1人が転職をしています。
転職活動時は転職先の年収が気になるでしょうが、同時に「退職金」がどうなるのかも気に掛けておくことが大切です。なぜなら、転職によって定年退職時に受け取れる退職金が比較的少なくなることが珍しくないからです。「転職で老後貧乏に……」とならないよう、退職金の支給額の決まり方や転職時の退職金の活用方法を知っておきましょう。
転職で退職金が減る⁉
転職をすると、転職をしない場合に比べて退職金が少なくなる可能性が高くなります。退職金制度は会社によって様々ですが、退職時の月給や勤続年数、退職理由によって退職金の金額が決まるのが主流です。転職は退職理由が自己都合となるうえ、一つの会社で働き続ける年数が短くなるため、退職金が少なくなることが多いのです。
国家公務員の退職金制度を一例として、勤続年数や退職理由がどのくらい退職金に影響するかを見てみましょう。
図1.国家公務員の退職手当支給率(退職理由別・勤続期間別)
※内閣閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」をもとに執筆者作成
(1)支給率が低くなる自己都合退職
退職金の支給率は、定年退職や自己都合、会社都合などの退職理由によって変わります。国家公務員の例では、自己都合退職の支給率は、定年退職等の60%~100%と定められています。特に勤続年数10年以下は、定年退職等の60%の支給率となり、勤続年数が短いときに自己都合退職をすると、退職金の金額は期待できないということが予想できます。
(2)勤続年数20年以下に注意
退職金の支給率は、勤続年数が長くなるにつれて高くなるのが一般的ですが、その上がり方は正比例であるとは限りません。国家公務員の自己都合退職時の支給率を見ると、勤続年数20年以下の時期はより低く、勤続年数20年以上の時期はより高く設定されています。さらに、3年以下で会社を辞めた場合には、退職金が支給されないことも珍しくありません。
つまり、転職を繰り返してそれぞれの会社での勤続年数が短くなる場合、働いている合計期間は同じであっても、退職金の合計金額は減る可能性が高いと想定しておく必要があるのです。
(3)2割の会社は退職金制度がない
転職先の会社が退職金制度を導入していないケースもあります。厚生労働省の平成30年就労条件総合調査によると、退職金(一時金および年金)制度がある企業は80.5%となっています。おおむね5社のうち1社は退職金制度がないということです。
そのため、転職時には転職先の年収だけでなく、退職金制度の有無や、想定される退職金がどのくらいなのかも確認できると安心です。
このように、転職先の退職金制度の有無や転職先の勤続年数によっては定年時の退職金は期待することができません。転職自体は悪いことではありませんが、転職して退職金が少なくなると想定される場合には、老後に備えて自分で工夫して備えておく必要があることを意識しておきましょう。