はじめに

経済指標って何?ニュースを見て数値を分析するクセをつけよう』、『経済アナリストがスーパーで密かに追っかけてしまうモノ』と2回にわたって、経済指標について話してきましたが、今回でこの経済指標シリーズは最後です。

経済指標は非常に種類が多ので、全てをくまなく確認して分析するのは難しいもの。過去2回に学んだ国内総生産(GDP)と消費者物価指数(CPI)、そして、今回学ぶ完全失業率の3つの経済指標を今後は確認する習慣を身に付けてもらえればと思います。


景気が悪いことを一番実感できる指標

GDPやCPIの意味や数字の見方は理解できても、実感のない経済指標かもしれません。GDPの成長率が前年比1.0%の年と3.0%の年。この2年は経済指標の数字では大きな差ですが、生活の実感としては極端に大きな差を感じることはできないでしょう。

特にCPIは、20年以上も低インフレ状態を続けている日本で、物価上昇を実感するのはなかなか難しいかもしれません。筆者はインドネシアの首都ジャカルタに駐在していたこともありますが、高い経済成長を続ける新興国では物価上昇を容易に体感できます。1年でモノの値段が倍近くに上昇することも珍しくはありません。

日本で、景気の変動を一番実感できるのが完全失業率かもしれません。完全失業率とは労働力人口に占める完全失業者の割合を意味します。15歳以上の人口は労働力人口と非労働力人口に分かれます。非労働力人口は、通学や家事をしている人、高齢者を指します。つまり、それ以外の人は労働力人口に数えられることになります。そして、労働力人口は更に就業者と完全失業者に分かれます。この完全失業者の数を労働力人口の数で割れば、完全失業率は算出できます。

完全失業率
(出所):総務省統計局「労働力調査」を基に株式会社マネネ作成。

上図は完全失業率の推移ですが、リーマンショックのあった2008年9月から一気に失業率が上昇したことが分かるかと思います。そして、この数年は改善し続け、最近は2.3%から2.5%という非常に低い水準で安定していることが分かります。

景気が悪いと「就職氷河期」、景気が良くなると「売り手市場」という言葉を耳にしますよね。やはり、私たちが最も実感として感じられる経済指標は完全失業率かもしれません。

経済指標にもクセが存在する

しかし、完全失業率を見る際に、注意しないといけないことが2つあります。1つ目は景気が良くなると、失業率が上昇することがあるのです。これは、景気が良くなって、会社を辞めて新たに条件の良い職場を探し始めたり、これまでは完全に職を探すことを諦めていた人たちが求職活動を始め、失業者としてカウントされることによります。

2つ目は完全失業率は景気の遅行指数であることです。日本企業は外資系企業のように、即日解雇はできず、従業員を削減するのに時間がかかります。それ故、実際に景気が悪くなったとしても、完全失業率がすぐに上昇するわけではなく、実態の景気の変化よりも少し遅れて数字が動いていくのです。

このように、経済指標は数字を額面通りに受け取るのではなく、それぞれの指標のクセを理解しながら確認する必要があります。

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