はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する内藤忍氏がお答えします。
自営業をしています。 以前、年金の支給開始時期を個人の選択次第で「75歳から」にすることも検討しているとニュースで見ました。これからの年金をどう考えるべきか、ご意見をお聞かせいただけないでしょうか? 個人的には、自己責任のもと、年金を払わずに個人で運用する方法もよいのではないかと考えているのですが……。
(30代前半 独身 男性)
内藤: 年金の損得について、マネー誌や金融関係のサイトで頻繁に試算が掲載されていますが、私には意味があるとは思えません。
なぜなら、国民年金への加入と毎月の支払いは国民の義務であって、損するからといって払わないという選択肢はないからです。
資産設計の具体的なプランを考えよう
それよりも考えなければいけないことは、国の年金制度が現状よりもさらに加入者にとって不利な状態になることも覚悟した上での、自分自身の資産設計の具体的なプランです。
老後のマネープランとして、現状の年金制度のままであっても年金だけですべての生活費を賄うことができると考えるのは現実的ではありません。むしろ年金がもらえなかったとしても、自分自身の資産だけでお金に困らない状態となることを目標に、着実な資産形成をしていくべきでしょう。
質問者の方は、まだ30代前半ですので、リタイア後の年金生活までには30年以上の長い時間があります。これから、この時間を有効に使っていくことができます。
時間を味方につけた資産形成として最も効率的なのは、低コストな投資信託の積立を使った長期分散投資です。金融資産が1,000万円くらいになるまでは、毎月の収入から定額でこのような積立をしていくのがよい方法です。
選ぶべきはノーロードのインデックスファンド
投資信託は、販売手数料のかからないノーロードファンドを選びましょう。
ファンドの種類としては、一般にインデックス運用を行うインデックスファンドの方が、アクティブファンドより低コストです。さらに、アクティブファンドは自分でよいファンドを選ぶのが難しいという難点もありますので、少なくとも投資初心者のうちは、低コストのインデックスノーロードファンドを使っていくのがよいでしょう。
投資対象としては、日本株、日本債券、外国株、外国債券、その他の資産(REIT、金など)といった分類になります。それぞれの資産に対応したインデックスファンドがありますので、それを組み合わせていきます。例えば、日本株であればTOPIXに連動するインデックスファンドがあります。
ネット証券で投資信託の購入を行えば、毎月1,000円からでも自動積立ができますので、1万円の積立でも10種類の投資信託を組み合わせることができます。
組み合わせ比率については、リスクを考慮しながらバランスを考えます。株式や外貨資産は変動リスクが大きくなりますから、一定の範囲に配分比率を調整することで対応していきます。
効率的な資産運用を行うためには、信頼できるアドバイザーの存在も重要です。ファイナンシャルプランナーのような資産運用の専門家のアドバイスを定期的に受けることもおすすめします。
低コストな投資信託と専門家の活用によって、年金に頼らない資産設計を実現してみてください。