はじめに
老後資金はいくらあればいいのか?
また、金融庁の老後資金2,000万円不足レポートもあり、老後資金や資産運用についての話題も最近は多くなっています。6月には「年金返せデモ」が都内で行われ、報道によれば参加者は2,000人を超えたそうです。しかし、これも不思議な話で、このレポートには特段斬新なことなど書かれていないのです。既に公開されていた公の統計を用いて、あくまで平均値として算出するとこうなる、と書いてあるだけです。わざわざ平均値と書いてくれているにもかかわらず、これほどの騒ぎになるのは、レポート作成に関わった人たちも想像していなかったでしょう。
激高している人達に話を聞いてみると、老後は年金だけで暮らせると思っていたのに、裏切られたとのことですが、日頃からデータを見て計算していれば、老後は年金だけで生活できるとは到底思えないでしょう。普通に計算してみれば、不足額はむしろ2,000万円をゆうに超えていきます。平均寿命が長くなる一方で、一向に給与も上がらず、非正規雇用も単身世帯も増えていく日本において、今とは正反対の状況の頃に作られた年金制度が大きな変更点もなく運営し続けられると考える方がムリがあるのではないでしょうか。
NISAやiDeCoなどの制度が開始されたとき、喜ばしい制度である一方、その意味は各人が自助努力してくださいね、というメッセージなのではないかと、叩かれたこともありましたが、結局数年が経ち、実際にその様な事象が起きてしまったのです。
感情だけで語るのはやめよう
消費増税と老後資金問題を例に挙げましたが、これ以外にも職場の人や友人と議論をする機会はあるでしょう。その際に心がけて欲しいのは、感情的に議論をするのではなく、必ず意見にデータや事実に基づいた根拠を持たせて欲しいのです。自分の主張や行動に根拠を持たせるべく、その根拠をデータや事実で固めていく作業こそ、議論力の向上につながっていき、同時に投資力を高めていくことになるのです。
なんとなく、この株を買ってみよう、と衝動的に投資行動を起こすのではなく、なぜこのタイミングで、この株をこの金額で買おうとしているのか。全てのポイントに根拠を持つべく、企業業績や業界動向、これまでの歴史やマクロ環境など、様々なデータや事実を見て、実際の投資行動を起こしていく。そのなかで、時に失敗することがあっても、その繰り返しでしか、投資力は向上していかないと筆者は考えます。