はじめに

以前この欄で取り上げた、東京商工リサーチが実施している役員報酬ランキングの総括版が公表されました。目玉は、役員報酬と従業員の平均給与との格差が大きい順にランキングした「格差ランキング」です。

有価証券報告書には、1億円以上もらった役員についての個別開示だけでなく、従業員の平均年齢、平均給与も記載されます。このランキングは「トップばかりが高給を取り、一般の従業員は安月給に甘んじている」という構図が見えるのではないかという、人の嫉妬心をくすぐる秀逸な視点です。

結果は、ちょっと意外なものでした。この格差ランキングに登場した顔ぶれは、役員報酬ランキングの顔ぶれとはかなり異なっているのです。


格差100倍超えは2人

この調査では、倍率が高い順に、上位20位までを公表しています。始まったのは昨年。今年は2回目です。

従業員の平均給与との比較なので、役員報酬も「基本給+賞与」で集計しています。長年役員を務めた人が受け取る莫大な退職金など、基本報酬+賞与以外のすべての報酬込みの金額との比較もしています。

ここに登場する顔ぶれで、役員報酬ランキングの上位30位内に登場する人は5人しかいません。役員報酬ランキングに登場する人たちは、実績に応じて一部の報酬を株式でもらっていたり、ストックオプションで底上げされていたりするので、基本報酬と賞与だけで集計すると顔ぶれが変わってしまうのです。

役員報酬ランキングと格差ランキングの双方に登場しているのは、日産自動車のカルロス・ゴーン元社長(報酬ランキング5位)、日本調剤の三津原博前社長(同16位)、ソフトバンクグループのマルセロ・クラウレCOO(同3位)、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長(同4位)、三共の毒島秀行会長(同24位)の5人。三津原氏、毒島氏はオーナー経営者、外国人3人は雇われ経営者です。

格差ランキング

カルロス・ゴーン氏の基本報酬額+賞与は16億4,700万円です。これに対して従業員の平均給与は545万円ですので、格差は201.99倍です。

2位の三津原博氏は基本報酬額+賞与では121.50倍ですが、退職金も含めると133.04倍です。

3位のソフトバンクグループのマルセロ・クラウレ副社長は基本報酬額+賞与では格差は95.11倍ですが、基本報酬以外に株式で受け取っている報酬が6億1,000万円ありますので、それを含めれば格差は143.78倍にハネ上がります。

武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長も基本報酬+賞与では82.91倍ですが、株式報酬を加えると、格差も160.69倍にハネ上がります。

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