はじめに
親の老後・介護について、どのように切り出したら良いのか?
子どもの立場から、「両親の老後の暮らしや介護のことについて、親に面と向かって聞きにくい」と思われる方が多いでしょう。反対に、親の立場からすると、「子どもに心配や負担をかけたくない」と思い、お互いに遠慮し合っているように思います。
オリックス・リビング株式会社が行った「第11回 介護に関する意識調査」(2018年9月実施)によると、自身に介護が必要になった場合、不安に感じることとして、金銭的問題(71.1%)、家族への負担(68.3%)が挙げられています。その一方で、将来に不安を感じながらも、具体的に準備をしていない理由として、イメージがつかない(53.5%)、まだまだ先だと思うから(30.7%)が挙げられています。
親子が互いに遠慮し合っていることと、親の立場でも自身の老後や介護について具体的なイメージを持っていなかったり、考えること自体を先延ばしにしている様子がうかがえます。親子間でお互いに曖昧にしたままでは、イザという時に対応できる選択肢が少なくなってしまいます。
子どもの方から、「お父さん、お母さんの将来のことが心配だし、しっかり準備をしたいので、気持ちや考えを聞かせてほしい」と伝えれば、ご両親もきちんと話してくれると思います。
いきなり、両親の老後や介護の話を切り出すのに勇気がいるという場合は、家族の思い出話などをしながら、過去の話、現在の話、そして将来の話へと繋げれば、自然な流れで切り出すことができるでしょう。
【現在の生活状況】
将来の話に入る前に、現在の生活状況も確認しましょう。買い物や食事の支度など家事をきちんとできているか、普段の生活で困っていることや心配なことはないかを確認します。すぐに解決できることがあれば対策を講じます。
【将来の住まい】
住まいに対する希望を聞きます。現在の住まいで困っていることはないか、修繕やバリアフリー化など、リフォームの必要性などを確認します。また、将来も現在の住まいに住み続けたいのかどうかなども確認しましょう。
【健康や介護】
親の健康状況についても把握しておくと良いでしょう。現在かかっている病気や飲んでいる薬、かかりつけ医などの情報を知っておくと安心です。また介護については、在宅の介護を希望しているのか、さらには同居を希望しているのかや、介護施設についての考え方も確認しておくと良いでしょう。
【家計収支と財産管理のこと】
現在の生活状況や住まいのこと、健康や介護のこと、それら親の希望をかなえるためには「お金」が必要です。親の方も、話の流れで、現在の家計状況や手持ちの資産についての情報を安心して明かしてくれると思います。親の家計や資産状況が不明なことが、子どもが親の将来を考える際に一番不安に感じるポイントです。ただし、最初に財産のことだけ聞くと、親の方が財産目的ではないかと警戒してしまうので注意が必要です。
【親の希望と自身のライフプラン、家計状況からできること、できないことを伝える】
生活状況、住まい、介護などについて聞いていく中で、親からの希望が示されることがあるでしょう。子どもとして、すべてかなえてあげたいと思うかもしれません。けれども、それで自分たち家族のライフプランを実現できなくなってしまうのは残念なことです。援助できそうなこと、できないことを早めに伝えた方が、他の代替案を考えることができます。自分たちだけで解決するのではなく、介護保険などの公的な支援制度の情報をあらかじめ収集しておくことも大切です。
親の希望は兄妹姉妹間で共有し「家族会議」を開く
親の希望を聞く場合は、一人で聞くのではなく、兄弟姉妹全員で聞き、兄弟姉妹間で共有するのが良いです。
「私は、母から〇〇だと聞いた」「私には、〇〇と言った」というような断片的な情報だと、かえって混乱します。大切な話だからこそ、親と兄弟姉妹が一堂に会して、将来のことをしっかり決めておくと良いでしょう。親の希望を聞くことも大切ですし、子どもからできること、できないことを親にしっかり伝えることも大切です。
相談者様は、長男なので、自分がしっかりサポートしたいという気持ちが強くお持ちのようです。それは大変素晴らしいことです。けれども、1人でがんばるよりも、兄弟姉妹で協力した方が各々の負担は少なくなります。兄弟姉妹間で、親の将来の生活のサポートや資金援助について、役割分担を決めると良いでしょう。そのためには、親の現在の状況や将来の希望について、兄弟姉妹間で共有していることが大前提です。
親・兄弟姉妹間でコミュニケーションをしっかり取り、情報を共有することが、親の老後・介護に対する不安を取り除くために重要です。お盆やお正月など、親族が一堂に会する機会に合わせて、親の将来を考えるための「家族会議」を開いてみてはいかがでしょうか?
親の老後・介護問題を解消する「4つのポイント」
1. 自身のライフプラン、マネープランを立て、両親への援助ができる、できないの目安をつくる。
2. 親との会話のきっかけは、心配な気持ちを伝え、過去から現在、将来の順に話を繋いでから切り出す。
3. 親の希望は、兄弟姉妹と一緒に家族会議で聞く。
4. 一人で解決しない、兄弟姉妹の役割分担と公的制度の活用を。
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