はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。

現在、保有している金融資産は200万円ほど、これから年額100万円程度を貯蓄していくことを検討しております。老後のための資金も必要になりますので、税制面で有利な確定拠出年金制度の利用も検討しました。ただ、下記の3つの観点から、躊躇しています。
1.そもそも40年後まで制度が担保されるのか?
2.米国債がデフォルトするなど大規模な金融変動が起こった際に対応できるのか?
3.今後、住宅取得する際の支払いには使えない(負債と債権の両抱えになった時、差分でプラスにするのは難しい?)
確定拠出年金への加入は、私のような20代独身であっても勧められるものなのでしょうか?
(20代後半 独身 男性)


深野: 確定拠出年金制度は、勤労者が老後資金を準備するために導入されたものです。制度には企業型と個人型があり、企業型では掛け金を企業が拠出し、運用を加入者(従業員)が行います。個人型では、掛け金の拠出も運用も加入者が自身で行うことになります。

掛け金の拠出をしながら、積み立てたお金を払い出すことができないため、積み立てたお金は原則60歳以降に老後資金として受け取るかたちになります。

2017年1月からは、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入範囲が拡大され、公務員や専業主婦の方なども加入することができるようになりました。このような制度変更が行われることは今後もありえますが、確定拠出年金制度そのものがなくなることはないでしょう。

また、制度の変更は基本的に加入者の使い勝手がよくなる変更になると思いますので、ご心配は必要ないでしょう。

確定拠出年金制度導入の背景

制度そのものがなくなると考えられないのは、確定拠出年金制度はそもそも企業年金制度に代わる制度として導入されたという背景があるからです。

過去の企業年金制度は、運用の予定利率を保証していたことから、運用がうまくいかなかった場合、企業がその補てんをしていました。この補てんが年金給付債務と呼ばれるもので、これまで企業が多大なる補てんをしてきた経緯があり、この補てんによって企業経営の根幹すら脅かされるような懸念がありました。

この補てんをなくすための措置、言い換えれば代替制度として確定拠出年金制度が導入されました。この制度を廃止するとなれば、企業側からも大反対の圧力がかかる可能性があるのです。

金融の大変動に影響を受ける可能性は?

また、金融の大変動があった場合に影響を受ける可能性は当然あると考えられます。その場合は、確定拠出年金制度も、自分で運用しているケースでも同じだと考えられます。

ただ、確定拠出年金制度の運用商品には、投資信託のほか、預金、生命保険、損害保険などがあります。どの商品を選ぶかは加入者が自由に決めることができるので、預金や生命保険であれば、大きな金融不安があったとしてもその影響は軽微ですむと思われます。預金は預金保険制度、保険は生命保険保護機構による一定の保証があるからです。

「20代独身の人にお勧めか?」と問われれば、積立の途中で資金を引き出すことができないため、預貯金などの金融資産をある程度は確保してから始められるほうがよいと思われます。

金融資産を確保し、確定拠出年金を始めた場合でも、20代や30代であれば、多額の掛け金で確定拠出年金を行うことは控えるべきでしょう。老後を迎えるまでにも、まとまった資金が必要なライフイベントがたくさんあるからです。

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