はじめに
老後資金2,000万円問題をキッカケとして、証券会社の口座開設数が増えたり、金融機関のセミナーに参加する人が増えているそうです。なかなか金融教育を受ける機会がなく、資産運用と接点を持つ機会も少ない日本人が投資に興味を持つキッカケになったことは確かです。
では、今回の問題より前に投資に興味を持った個人投資家はどのようなキッカケだったのでしょうか。筆者の場合とキッカケになりうるいくつかの事例を紹介しましょう。
映画がキッカケになることもある?
先日、『ハミングバード・プロジェクト 0.001 秒の男たち』という映画を観てきました。舞台はアメリカ。米国債ショックの影響で日経平均が9,000円を割り込んだ2011年、いまでは一般的となっている「株式高頻度取引(HFT)」を活用して大金を儲けようと企む人たちの映画です。
投資に興味がない人も、ブラッド・ピットが主演した「マネーボール」は観たことがあるかもしれませんが、この映画の原作者は「マネーボール」と同じマイケル・ルイスです。
ネタバレしないように内容については詳しく書きませんが、主人公は他の注文を1/1000秒 (ミリ秒) 単位で先回りして大金を儲けようとします。これまでの連載の中で、株式投資でリスクを抑えながらリターンを得るために経済や企業業績を分析しましょうと話をしましたが、このアプローチは全く違いますね。
世の中には、分析によってリターンの源泉を得るのではなく、物理的にリターンを得ることを考える人もいるのです。日本でも天才ハッカーが登場する漫画やドラマが流行ったこともありますが、それらに似たカッコよさがあるかもしれません。
投資と聞くと難しくて敬遠してしまう人が、映画を観てカッコいいなぁと興味を持つのもひとつのきっかけになるでしょう。
筆者の株式投資の出会い
著書『親子ゼニ問答』のなかでも書いているのですが、筆者と株式投資の出会いは大学生の時、1冊の本がキッカケでした。当時はそのような言葉はなかったのですが、その本はいまでいう「億り人」になった個人投資家が書いたもので、自身の株式投資の歴史を綴った本でした。
その本の中で、経済や金融の知識があって、テレビゲームが得意な人は素養があると書いてあり、それなら自分でもできるかもしれないと思った大学生の筆者はすぐにネット証券で口座開設をしました。
将来のために資産運用という、最近の投資家が投資を始めるような崇高な目的ではなく、なんとなくヒマだからやってみよう程度の始まりでした。しかし、そこから基礎的な取引方法や分析方法を独学し、2年後には運用会社に就職することとなります。
キッカケはなんとなくでしたが、その後、独学していく中でプロと呼ばれる機関投資家は個人投資家と違ってどのような分析、運用をしているのかが気になり、わからないなりに勉強しながらプロの世界に足を踏み入れたのです。
最近は個人投資家の人と話をする機会が多いのですが、投資に興味を持ったキッカケは本当にさまざまです。しかし、この数年で投資を始めた人は本やブログを読んでという人が多くいます。プロの投資家や大物投資家の話よりも、実際に未経験者が経験を積んでいく過程を等身大の形で読めるのがいいのかもしれません。