はじめに

違法マンガ配信サイト「漫画村」を運営していたとみられる星野路実容疑者が9月24日、著作権法違反などの疑いで逮捕されました。同サイトは2018年4月に閉鎖されるまで、政府も言及せざるを得なくなるほど利用者を拡大させ、大きな話題となりました。

首相官邸が2018年4月に公開した「知的財産戦略本部会合・犯罪対策閣僚会議」の資料では、漫画村の利用者を「1億6000万人」と記していました。出版関連の業界にもたらした被害は甚大で、推計被害額はおよそ3,000億円であると同資料でも指摘されています (推計被害額は一般社団法人 コンテンツ海外流通促進機構調べ) 。

クリエイターや出版業界へ還元されるべき対価が奪われ、甚大な被害をもたらした点で、漫画村の存在は到底許されるべきものではありませんでした。一方で、漫画村が電子マンガ市場に変化をもたらしたことを示唆するデータが現れ始めています。


電子マンガ市場が急成長した事実

インプレス総合研究所が公表した「電子書籍に関する調査結果2019」では、漫画村をはじめとした海賊版サイトが結果的に電子書籍の認知度向上につながった可能性について言及しています。

「社会問題化していた海賊版サイトが2018年4月に閉鎖されて以降、多くの電子書籍ストアが多額のマーケティング予算を前倒しで投入したこと、結果的には海賊版サイトが電子書籍の認知度向上につながったことも遠因となり、新規ユーザーの増加や平均利用金額の増加につながり、売上は劇的に拡大しました」

下図は、電子書籍の市場規模を時系列で示したグラフです。これによると、小説や写真集などが含まれる「文字もの」と比較して、「マンガ」は高成長を続けていることがわかります。

電子書籍市場

漫画村が閉鎖した2018年度における「文字もの」の伸び率が前年比+11%である一方、「マンガ」は前年比+29%と高成長となりました。足元では、電子書籍市場のうち84.5%のシェアを「マンガ」が占めるという状況になっています。

インプレス総合研究所は、電子書籍市場について今後も高い成長率を維持すると予想しています。2023年度の電子書籍市場は4,330億円程度と、現在の1.5倍の規模まで成長する見通しです。

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