はじめに
セブンとイオンを分けた要因
この大きな違いはどこから出ているのでしょうか。「セグメント業績」という事業ごとの業績をチェックすると、その答えが見えてきます。下表は、セブン&アイのセグメント業績(利益)です。
表を見ると、セブン&アイは「国内コンビニエンスストア」と「海外コンビニエンスストア」が稼ぎ頭で、2つのセグメントで全体の利益の約9割をたたき出しています。特に国内コンビニエンスストアは、売上高に対する利益率が約30%ある超高収益事業です。コンビニ事業以外では「セブン銀行」などを展開している金融事業が第3の稼ぎ頭となっています。
ちなみに「スーパーストア」はイトーヨカドーやヨークベニマル、「百貨店」はそごう・西武などです。これらはほとんど儲かっていない、またはセグメント赤字となっています。
続いて、イオンのセグメント業績を見てみましょう。同社の稼ぎ頭は、なんとイオン銀行などが属する「総合金融」です。続いてイオンモールの開発を手掛けている「ディベロッパー」となっています。
イオンといえば当然、巨大スーパーの「イオン」が思い浮かびますが、実は「総合スーパー(GMS)」事業はセグメント赤字で、さらに1年前よりも赤字が拡大しています。また、コンビニエンスストアのミニストップや小規模スーパーのマックスバリュが属する「スーパーマーケット」事業も、黒字は出ているものの前年から利益が半減している厳しい状況です。ちなみにミニストップだけで見ると、営業赤字を計上しています。
セブンも順風満帆ではない?
このように、セブン&アイで莫大な利益を稼いでいるコンビニ事業がイオンでは赤字となっており、セブン&アイのコンビニ事業に匹敵する稼げる事業をイオンが持っていないことが両社の稼ぐ力を分けている最大の理由だといえます。
両社とも金融事業でしっかりと稼いでおり、さらにイオンはドラッグストアのウエルシアホールディングスが属する「ヘルス&ウエルネス」の業績も非常に好調です。しかし、それだけでは本業の不調を補うに至っていません。
ただし、セブン&アイの国内コンビニ事業も、実は順風満帆というわけではありません。近年は売り上げの伸びが明らかに鈍化しているのに加えて、営業時間などをめぐって会社とFCオーナーの対立が一部社会問題化するなど、解決すべき課題を多く抱えています。
このように見ていくと、セブン&アイもイオンも本業の小売り事業の立て直しが課題となっていることがわかります。どちらも一朝一夕で解決できる問題ではなさそう。今後は両社の経営改革の真価が試される局面といえそうです。
<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>