はじめに
団円システムが生み出す間接的効用
アリババは、このようなシステムの開発をCSR事業の1つと位置づけています。自社が持つIT技術をフル活用し、それを社会に還元する――。アリババ流に言うと「公益事業にビジネス手法を活用する」ですが、この団円システムは多くのアリババの社員が参加し、完成させたシステムです。
子どもの失踪や誘拐といった事案は本来、公安部など国の担当部署が中心となって解決すべき問題でしょう。しかし、民間企業であるアリババがこのような社会問題の解決にコミットするのは、珍しいことではありません。
これまでも、国有銀行による不便な金融機関の諸手続きを、アリペイのネット決済の導入を通じて解決してきました。また、医療問題など多くの社会サービスの改善についても、健康アプリの開発やオンライン診療によって、病院での待ち時間の短縮や、医師への受診機会の拡大などを実現してきました。
団円システムの取り組みは、それ自体が収益とはそれほど関係ないかもしれません。しかし、政府が長年解決できなかった問題の解決に関わることで、多くのユーザーから支持を得ることができ、顧客が他のエコシステムに流れてしまうのを防いできた側面も考えられます。
政府はアリババの力を借りることで、社会問題を改善することができます。顧客も「自身の子どもに何かあれば、アリババが解決に力を貸してくれるかもしれない」という安心感を得ることができます。最終的には、政府や顧客からの信頼感が向上することで、自社のビジネス拡大につながっている面もありそうです。