はじめに
10月下旬から11月中旬にかけて、日本企業の2019年7~9月期決算が発表されました。全体としては厳しい内容でしたが、業種別に見ると“まだら模様”の様相でした。
一般的に、業績が芳しくなければ、その後の株価の動きも冴えない展開になりがち。しかし、11月に入ってからの日経平均株価は2万3,000円台を回復し、年初来高値を更新しています。
いったい、どんなカラクリが潜んでいるのでしょうか。景気敏感株の代名詞である小松製作所(コマツ、証券コード:6301)を例に、考えてみます。
7~9月期は市場全体で2ケタ減益に
3月期決算を採用していて、昨年と今年の7~9月期の売上高・営業利益を比較可能な2,258銘柄を集計したところ、下表のように、売上高は前年同期比1.5%増、本業の儲けを示す営業利益は同13.6%減と厳しい結果になりました。
業種別に決算の傾向を見ていくと、米中の貿易戦争の影響が色濃く見られます。
たとえば「鉄鋼」「非鉄金属」「機械」「電気機器」「輸送用機器」など景気の影響を受けやすい景気敏感業種は、いずれも減収減益の厳しい内容でした。米国や中国にとどまらず、欧州や新興国を含めて世界的に景気が芳しくないため、外需依存度の高い業種は業況が厳しくなっているものとみられます。
一方で「小売業」「建設業」「サービス業」「倉庫運輸関連業」「陸運業」が増収増益を達成するなど、日本国内を中心にビジネスを展開している内需関連業種はおおむね堅調な内容でした。ただ、これらの業種の7~9月決算には消費増税前の駆け込み需要が含まれています。10~12月期に反動が出てくるので、多少は割り引いて考える必要があります。
コマツ決算に影を落とす貿易戦争の影響
貿易戦争やそれに伴う影響がどのように出ているのか、世界トップクラスの建設機械メーカーであるコマツを例に考えてみましょう。
10月30日に発表された同社の7~9月期決算は、売上高が前年同期比10%減の6,037億円、営業利益が35%減の672億円と減収減益でした。さらに、通期の売上高予想を従来の2.61兆円から2.47兆円に、営業利益予想を3,370億円から2,790億円に下方修正しました。
コマツが公開している決算説明資料を見ると、「上期はアジア、中国を中心に売上高が想定を下回り、下期についても米中貿易摩擦などの外部環境が依然不透明であることから、需要は想定より弱含むことが予想される」との記載があり、ハッキリと貿易戦争による影響が大きいことが記されています。
同資料によると、中国の売上高は前年同期の309億円から252億円に、アジアの売上高は916億円から530億円に大きく減少しています。日本や欧州は売り上げが増加していますし、北米は微減にとどまっていますので、中国やアジアの景気低迷が大きく影響していることがわかります。