はじめに

すぐに使うお金は「預貯金」、長期的に使わないお金は「投資」

相談者さんもおっしゃるように、今の800万円ほどの貯金をそのまま預貯金で持っているのは少しもったいないですね。現状のやりくりでも毎月5万円ほどの余剰金が出ているのですから、これはすべて投資に回してもよいと思います。

ご興味があるようでしたら、株価の指標に連動することを目指す「インデックス型の投資信託」に定期的に積み立てると、リスクが分散されて、よりローリスクで、かつ手数料などのコストを抑えて運用できます。

値動きが大きくないので、お金の増え方もはじめの方は少ないと感じるでしょうし、地味な投資の仕方ではありますが、時間を味方につけ、長期間継続していくと、複利の力でお金を増やすことができます。投資なので増えることもあれば減ることもありますが、経済成長と共に成長していくものですので、長期的にみると預貯金で持つよりずっと増えていたという結果になると思いますよ。

投資か、貯金かと極端に考えるのではなく、すぐに使う予定のあるお金は預貯金で、長期的に使わないお金は投資で持つと考えてもよいですね。今から始めると、最初に考えた「自分にとって必要な老後資金」を余裕をもって作ることができると思います。

退職金がないと悲観せずに、まずは国の制度を使って長期投資を

投資を始めようと思うと、証券口座をどこに開くか、どのように始めようかと迷うことが多いかと思います。お仕事をされていて忙しい方は、ネット証券が便利だと思いますよ。今は投資商品も充実していますし、セキュリティも心配なく、取引も簡単です。

そこで、老後資金であれば60歳まで引き出すことができない「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と、いつでも引き出すことができる「つみたてNISA」の口座も申し込んでおきましょう。

iDeCoは、毎月5000円から掛けることができ、厚生年金に加入している会社員であれば、企業年金の加入状況により1万2000円~2万3000円が毎月の上限となります。掛け金が全額所得控除となり、運用益も非課税と税制面で優遇され、受取時も税控除されます。掛け金は毎月の他、ボーナスを利用して年2回、または年1回などの支払い方もできますが、それは掛け金を払える資格、つまり“公的年金制度の掛け金を払っている”という条件をクリアしている期間だけ可能です。

税優遇を考えるとメリットは高いのですが、私的年金制度の一つなので、今のところ60歳までは引き出せないため、老後までの間に「教育資金に充てたい」「マイホームの頭金に使いたい」ということはできません。

つみたてNISAは、定期的に積み立てることを条件としたNISA制度です。つみたてNISAが通常のNISAと異なる点は、年間の投資額の上限が40万円まで、非課税期間は20年間というところです。そして、投資できる商品も金融庁の基準をクリアした、リスクの少ない商品ばかりですので、はじめて投資をするという人にとっては間違ってリスクの高い商品を購入することがなく、始めやすいものだと思います。金額も、金融機関によっては100円からはじめることが可能です。

このように、国が投資に取り組みやすい制度を作っていますので、それらを利用して長期投資に挑戦してみてもよいと思います。退職金がないと悲観をせず、40代の今からはじめれば、現状で言うと17~18年間はiDeCoができますし、今後その上限年齢が上がる可能性もあります。つみたてNISAにおいては年齢の制限はないので、バランスを取りながら両方を始めてもよいと思いますよ。ぜひ、ご検討ください。

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのFPが答える「みんなの家計相談」の過去の記事一覧はこちらから。

この記事の感想を教えてください。