はじめに
会社員の妻が出産・育児休業でもらえるお金を整理する
家計が大きく変化する“子どもの誕生”。まず相談者様のように働く女性が妊娠・出産で会社を休んだ時にもらえるお金を確認しましょう。
相談者様は会社員で社会保険に加入していますので、「出産手当金」と「育児休業給付金」を受け取ることができます。制度内容と金額は次の通りです(※ここでは相談者様の額面月収がわからないため、手取り28万円を額面と仮定して計算しています)。
<出産手当金>
出産のため会社を休んだ時は出産手当金が支給されます。出産予定日を含む産前42日(6週間)、多胎妊娠の場合98日(14週間)から出産後56日(8週間)までの産前産後休業(産休)中に会社から給与の支払いを受けなかった場合、勤務先の健康保険から受け取ることのできるお金です。1日あたりの支給額は、休業前の日給のおよそ3分の2となります。
※支給開始日以前の継続した12ヵ月の各月の平均標準報酬月額を28万円と仮定
・標準報酬日額:28万円÷30日=9330円(1の位を四捨五入)
・1日当たりの金額:9330円×2/3=6220円(小数点1位を満四捨五入)
・出産手当金合計:6220円×98日=60万9560円
<育児休業給付金>
1歳未満の子供を養育するために育児休業(育休)を取得した場合、雇用保険から給付金を受け取れる制度です。給付金額は、育児休業開始から6ヵ月間(180日)は休業開始時賃金の67%、育児休業の開始から6ヵ月(181日以降)経過後は50%となります。
※休業開始時賃金日額×支払日数(30日)を28万円と仮定
1ヵ月の給付金180日まで:28万円×67%=18万7600円
1ヵ月の給付金181日以降:28万円×50%=14万円
育児休業給付金合計:(18万7600円×6ヵ月)+(14万円×約4ヵ月)=168万5600円
平均給与を28万円として試算した結果、もらえるお金は「出産手当金」が約61万円、「育児休業給付金」は約169万円となります。
なお、相談者様が産休や育休中に受け取る出産手当金や育児休業給付金には税金がかからず、また産休・育休ともに休業の「開始月」から「終了前月」までの社会保険料(健康保険と厚生年金)も免除となるため手取り金額は意外と多くなるようです。安心して子育てができる手厚い制度となっています。
出産後の家計、妻の収入が減少しても乗り切れる?
次に妊娠・出産で家計はどうなるのか。11月末に産休に入り、翌々年の1月に時短勤務で復帰するとした場合の相談者様の収入減をシミュレーションしてみましょう。
【出産前後の収入イメージ】
R×年1月1日を出産日とし平均給与28万円で試算
産前休業期間:R〇年11月21日~ R×年 1月 1日
産後休業期間:R×年 1月 2日~ R×年 2月26日
育児休業期間:R×年 2月27日~ R×年12月31日
時短勤務期間:R△年 1月 1日~ R△年12月31日
出産前の給与28万円、ボーナス30万円/1回
時短の給与:21万円(28万円÷8時間×6時間)
ボーナス:22.5万円/1回(30万円×6/8)
相談者様の出産前の収入合計を424万円(月収28万円×13ヵ月+ボーナス30万円×2回)とすると、産休・育休中の収入は約230万円となり、出産前に比べ194万円下がります。
さて、育休明けまでの13ヵ月をどう乗り切りますか。現在「先取り貯蓄10万円」を除く1ヵ月の支出は39万円です。産休に入ってからは、ご主人の月収21万円×13ヵ月+ボーナス30万円×2回=333万円に産休・育休の手当230万円を合算した563万円が育休明けまでの生活費の原資となります。月平均すると約43.3万円ですが、この金額がコンスタントに入ってくるわけではありません。上のイメージ図のように「出産手当金」や「育児休業給付金」は実際に受け取るまでに時間がかかりますので、毎月のやりくりには注意が必要です。
育休明け時短勤務の収入減はどれくらい?
次に育休明けに、相談者様が1年間時短勤務で職場復帰をすると、収入はどうなるでしょうか。フルタイム勤務であれば396万円(月収28万円×12ヵ月+ボーナス30万円×2回)になるのに対し、6時間の時短勤務の場合は297万円(月収21万円×12ヵ月+ボーナス22.5万円×2回)になり、99万円減ります。
アドバイスの2つ目は、育休中の収入減を補うための貯蓄をしておくことです。家計費を出し合った後に自由に使っているお小遣いの見直しをしましょう。お小遣いは互いに4万円ずつにするなど定額制とし、残り10万円は「育休用貯蓄」に回します。1年間だけの期間限定としても120万円貯まりますよね。一時的に家計が厳しくなった時に充当できる貯蓄があると安心できます。
3つ目のアドバイスは、ご主人の収入のみで生活してみることです。互いの意見を聞いてやりくり方法を変更するなどして実践してみましょう。
今は夫婦共働きで家計に余裕がありますが、子どもを授かって相談者様の収入が下がる時期は夫婦が一丸となって家計管理を行う必要があります。ライフプランの変化に耐えられる家計づくりを目指して頑張ってください。
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