はじめに

亡くなった方の遺産を相続人が分け合うときの分割方法は、「遺産分割協議」か「遺言書」によって決まりますが、相続争いを引き起こしやすいのは遺言書のない「遺産分割協議」の方です。

遺産分割を巡るトラブルは年々増加しており、相続の「相」を「争う」に掛け合わせて「争続」という言葉まで誕生してしまいました。事実、全国の家庭裁判所へ申し立てのあった遺産分割トラブルの件数は、平成12年度の8889件から、平成26年度には1万2577件と約4割増加しています。このような背景からか、相続を巡って家族の絆が壊れてしまうことのないよう、新聞等のメディアでも遺言作成への関心が高まっています。

遺産分割において相続争いが起こりやすい理由と、遺言書作成の基本を理解しましょう。


相続争い発生の理由

相続争いが起きやすい理由の多くは、遺産分割の方法にあります。

相続財産の分割(分け方)の流れは二つしかありません。故人(被相続人)の残した「遺言書」の内容に沿って行われるか、法定相続人の間で「遺産分割協議」を行うかです。この二つのうち、遺言書が法定相続人の遺留分(※)を侵害していなければ、故人の意思を尊重して遺言書の内容が優先されます。そのため、遺産分割協議は遺言書がない場合、もしくは、遺言書の内容に不足がある場合に行われることになります。この遺産分割協議が曲者なのです。

(※)遺留分とは、法律で定められている相続人(法定相続人)が相続財産の配分を最低限もらえる権利のことを言います。法定相続割合の半分に当たります。

遺産分割協議の注意点

遺産分割協議が行われた場合の注意点は、法定相続人の「全員一致」によってのみ協議が完結するということです。大半の相続人が納得できる分割内容であっても、一人でも反対する人がいれば協議がまとまりません。これが遺言書のない相続が揉めやすい原因です。

こうして遺産分割協議がまとまらなかった場合、家庭裁判所に申し立てをするしかありません。家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割は、まず調停委員などを交えた話し合いである調停から始まります。これは話し合いであるため、裁判所から具体的な命令が出るわけではありません。第三者を交えることで、冷静になって結論を出しやすくしようというものです。この調停でも話がまとまらなかった場合、具体的な命令を伴う審判や、高等裁判所での審理などへ進みます。

一見、調停段階ではマイルドに感じるかもしれませんが、この段階まで進んだ時点で大半の場合に家族の絆や縁は切れるというのが多くの弁護士や税理士の共通見解です。家庭裁判所に申し立てをした段階で、相続人はもう誰も得をしません。弁護士費用なども発生しますし、遺産分割の遅れによる納税や相続財産の運用にも支障をきたします。

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