はじめに

どこが株価崩落の“臨界点”だったのか

後から振り返れば、このように暴落のメカニズムを解説することはできます。しかし、予見が不可能なのはもとより、後になった今でさえ、どこが株価崩落につながる“臨界点”だったのか、正確に定めることはできません。

ただ、いくつか手がかりはあります。たとえば、下図はS&P500のチャートです。新型コロナウイルスの悪材料で1月末にも急落しています。

コロナショック
(出所)Bloomberg

ところがその時は切り返し、最高値へと向かいました。2月下旬は同じ水準まで下げて、75日線をブレークしてから下げが加速しています。

ファンダメンタルズから乖離した株価

もう1つの下図は、2015年のチャイナショックの時のS&P500のチャートです。サポートラインと意識されていた200日線を切ると、下げが加速したのがわかります。

チャイナショック
(出所)Bloomberg

米国の株式市場は世界で最も洗練された市場で、そこに集う投資家もまた超一流です。しかし意外なことに、テクニカルで動くことがまれにあるのです。

ここまで述べてきたように、ロスカット・ルールやリスク・パリティなどの運用制約上の理由で下げが加速したり、あるいはテクニカル的なポイント・ブレークで売られたりしたとすれば、それはミスプライスである可能性が高いと言えます。少なくとも、ファンダメンタルズからは乖離したプライスであると言えるのではないでしょうか。

株価は、上にも下にもオーバーシュートするものです。そうしたオーバーシュートした時こそ、投資のチャンスであることは歴史が証明しています。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>

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