はじめに
子育てや家事を「頼んでもやってくれない」「自分の世話も焼いてほしがる」夫たち
また、同じアンケートの「夫の育児や家事の参画度」については、下記のような回答が得られました。
子どもの世話については、「自主的にやってくれる」あるいは「頼めばやってくれる」が90%ですが、家事では69%。「頼んでもやってくれない」「自分の世話もやいてほしがる」は、子どもの世話では8%でしたが、家事では17%でした。
自分が授乳しているあいだに夕飯を作ってほしいという声もあり、夫の家事に対する意識や取り組みにも変容が望まれているのではないでしょうか。
また「夫が協力的になるために必要なこと」としては、67.2%が「夫婦のコミュニケーション」を挙げています。
産後のハードな子育てに追われる日々のなかで、時間にも心身の面でも余裕がなく、十分な夫婦のコミュニケーションを取ることの難しさを経験したご夫婦は少なくないのではないでしょうか。
また「協力できるよう十分な休暇(64.1%)」「職場の理解(59.4%)」「時短などで早く帰宅できる制度(51.6%)」と、職場の取り組みが必要な項目も高く、夫の職場への理解と協力の必要性を感じている産後女性の姿が浮かび上がります。
妻の産前産後、揺れる夫の心理
いっぽう夫の本音はどうなのか。耳を傾けてみると、筆者のもとへ寄せられる相談事例では、以下のようなことが挙げられています。
・妻が妊娠中や産後、イライラしがちで怒っりっぽくなったりと、ときには八つ当たりではないかと感じることもあるし、妻が人が変わってしまったかのように感じてつらい。
・自分は、仕事も、妊娠中への妻のケアも、子育ても、一生懸命にやっているつもりなのに、妻から責められる。自分は「よい夫・よい父親」「イクメン」でありたいし、そうしているつもりなのに、自分が情けなく、自信がなくなってきた。
・父親になる/なったというプレッシャーに、妻のような産前産後のホルモン変動による不調こそないけれども、不安になったり、責任感に押しつぶされそうになったりと、心理的に揺れている
それに対し、妻も苛立ってしまったり、頼りなく感じてしまったりして、夫婦間に溝ができていくという悪循環に陥る事例も少なくありません。
愛知県で起きた三つ子虐待死事件では「夫がオムツ交換に失敗したり、うまくあやせなかったりするを見て、頼れなくなっていき、追いつめられてしまった」といいます。
女性の産後については、社会の理解や、産後ケアなども進んできてはいます。
しかしながら、上記のような事例に接していて、夫は夫で、妻の産前産後は平常とは異なる心理状態にあることへの理解や、父親に特化したケアが必要なのではないか、とも考えさせられます。
男性は、幼い頃から「男は強くあるべき」「弱音を吐いてはいけない」「泣くのはみっともないことだ」といった固定観念や社会的なメッセージを受けて、それらを内在化させています。
そういった、男性ゆえの特性やつらさを踏まえた上で、さらに産前産後の女性がどのような身体的・心理的な状態にあるかに鑑みて、いかにパートナーシップをアップデートしていくか。家族関係を構築していくか。そのような視点による、夫婦や家族への包括的なケアや支援の必要性を感じるのです。