はじめに
「母親の育児休暇取得率8割」に隠された実態
では、母親の育児休暇についてはどうでしょうか。
同アンケートの「ママの仕事の継続について」では、「続けたかったが仕事を辞めた(27%)」「取りにくかったが育休を取得した(9%)」の計36%は、前回(URL)筆者への相談事例にも挙げた、育休の制度が形骸化している企業の存在や、非正規雇用者、妊娠・出産を機に退職せざるを得ない女性の存在などを表してもいるでしょう。
女性の育児休暇の取得率は82.2%(厚生労働省・平成30年度雇用均等基本調査(速報版))とされていますが、実はこの数字はあくまでも出産時点で就労していた女性を分母としており、妊娠中に退職した女性は含まれていません。
第一子の出産を機に退職する女性は46.9%、第二子・第三子の出産を機に退職する女性も2割にのぼります(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出産動向基本調査(夫婦調査)」2016年)。
第一子の妊娠・出産を機に退職した理由としては「子育てをしながら仕事を続けるのは大変だったから(52.3%)」「子育てに専念したかったから(46.1%)」「自分の体や胎児を大事にしたいと考えたから(41.8%)」「職場の出産・子育ての支援制度が不十分だったから(27.9%)」となっています(明治安田生活福祉研究所「出産・子育てに関する調査」平成30年6月)。
仕事を続けて子育てと両立していけるならばそうしたいけれども、困難だから不本意ながら辞めざるを得ない——そんな実態が浮かび上がります。
なお、「ママが育休中にほしい支援」としては「先輩ママやパパとの情報交換(22%)」「職場の様子を知らせてほしい(21%)」「復帰に向けて保育園情報を知らせてほしい(19%)」「仕事と子育ての両立のために役立つ情報を知らせてほしい(26%)」「復帰後の看護休暇などの情報を知らせてほしい(12%)」と、職場復帰後に向けた要望が並びました。
仕事を継続すること、子育てと仕事とを両立したいという希望と、それに対する不安や心配が表れているのではないでしょうか。
男性の育児休暇の課題は無論のこと、女性の育児休暇すらままならなかったり、安心して取れるものではなかったり、また取得できたとしても、マミートラックや待機児童問題など、子育てと仕事の両立には大きな課題が残ります。
また2017年に出産に伴って退職した女性は20万人と推定され、20万人ぶんの所得減少と、企業の付加価値の減少ぶんを合わせると、経済全体の損失は1兆1,741億円にものぼるとされています(第一生命経済研究News Release「出産退職の経済損失1.2兆円〜退職20万人の就業継続は何が鍵になるか?〜」)。
2019年に発表されたジェンダー・ギャップ指数が153カ国中121位と、G7、OECD加盟国のなかで最下位である日本。特に政治と経済で低い水準となっています。
子育てに明るい希望や安心感を抱けない国に未来はない——山積する社会課題への解決策が望まれています。
「産後に関するアンケート」(回答者数:93名)について
・回答者である産後女性の年齢は、20歳〜24歳が5%、25歳〜29歳のかたが17%、30〜34歳がもっとも多く51%。35歳〜39歳が19%、40〜44歳が8%。
・子どもの人数は、一人が48%、二人が42%、三人が8%、四人が2%。
・回答者である産後女性の就労状況は、育休中が38%、自営が6%、フルタイムが3%、パートと求職中が、それぞれ2%、無職が49%。
・夫の年齢は、回答者である妻と同様、30〜34歳がもっとも多く39%。35〜39歳が28%、40〜44歳が16%、25〜29歳が11%、45歳〜49歳が6%。
・夫の就労状況は、フルタイムが87%、自営が9%、育休中が2%、無職2%。
・夫の育休取得状況は、取得したことのない人が77%、産休を取得した人が17%。育休を取得した人は6%。