はじめに
赤字脱却のカギは「子どもの進路」と「収入増」
子どもが私立中学に在学しているということは、かなりの確率で高校も私立になると思われます。
高校の費用は文科省が2年に1回調査している「子供の学習費調査」より私立の平均額、大学の費用は国の教育ローンを取り扱う日本政策金融公庫による「教育費負担の実態調査」を参考に国立・私立の費用を、相談者の教育費支出と仮定してシミュレーションしたのが次のグラフです。
赤い線は、相談者が収入を得ないまま、子ども二人が私立高校へ進学し、大学は一人が私立文系、もう一人が私立理系に進学した場合の貯蓄残高推移です。子どもの大学入学と同時に赤字に陥り、夫の定年退職金で息を吹き返すものの、住宅ローンの繰上返済で再度の赤字となって、そこから抜け出せないまま老後を迎えます。
住宅ローンの利率が低いようであれば、繰上返済をしても減らせる利息額が少ないので繰上返済にこだわる必要はありません。月払いで払っていっても構いませんが、どちらにしてもいずれは赤字になってしまいます。
青い線は、やはり相談者が仕事をしないまま、子ども二人が私立高校から国立大学へ通う場合です。赤い線に比べると貯蓄の山は高く、赤字になる時期がありません。一見、働かなくてもよさそうに思えますが、それは甘すぎます。家電製品の買い替えや自宅のリフォーム代、車の買い替え代などが含まれておらず、それらを払えばやはり赤字になるでしょう。
緑の線は、赤い線の設定に相談者の収入を加算したものです。相談者が給料を稼ぐのは今から10年間の60歳までで、年間収入は夫の扶養の範囲に収まる100万円。赤い線よりも青い線よりも貯蓄の山はさらに高くなっていますし、これで十分と思えてしまいそうです。けれど、退職金で住宅ローンを繰上返済した後の貯蓄は1000万円を下回ります。この貯蓄額では老後生活資金としては少々心もとないのではないでしょうか。
シミュレーションでは子どもの大学卒業までの生活費を同額としましたが、実際は少し多くなっていくはずです。そうなると、年間100万円の収入ではよほど気持ちと財布のヒモを引き締めていかないと貯蓄増につながらない可能性が出てきます。
もう一息ゆとりを持てるように
人手不足とはいっても年齢を重ねると好条件の仕事は少なくなりますし、ご自身も新しい仕事にチャレンジする意欲を持ちにくくなります。体力も衰えていきますしね。働かないよりはずっといいのですが、年間100万円の収入増では安心できる老後を迎えるのは少し難しいかもしれません。扶養の範囲にこだわらず、体力のあるうちにしっかり収入を得るようにするといいでしょう。
それから、気になったことが一つ。
保険料が月額1万円となっていますが、この中に含まれている保険はどのような保障内容なのでしょうか。相談者と夫の生命保険と医療保険もある程度必要ですし、火災保険や地震保険、個人賠償責任保険などの保険料も考えるとリーズナブルすぎる気がします。
車の保険は「車両費」の中ですか? 家計が厳しいから保険なんて入っていられないという人がいますが、お金がないからこそ最低限の保険加入が必要です。教育費と老後生活費を支えるために、保険も一緒に考えてみてください。
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